第8話 あの星が降って来た夜
おばあちゃんは、あの星が降って来た夜を思い出していた。
「おばあちゃん、あの夜の話しが聞きたい。話してくれる?」
マリアがおばあちゃんの顔を見上げて言った。
「いいよ」
おばあちゃんは、ゆっくり話し始めた。
あの夜は、私は風邪気味で、毎週末の「星を見る会」。いつもなら、付き添いで一緒に行くんだけど、みんなを送ってから家に戻っていたんだ。
そろそろ迎えに行こうかと準備をしていた時、何か、小さい振動を感じて、なんだろう?って思ったんだよ。そしたら、外が明るいのに気づいた。急いで外に出たら、火球が西の空からどんどん近づいて山に落ちた。
それから、凄まじい、耳が壊れてしまうと思うほど大きな音。空気を引き裂く音、何度も爆発したような大きな音もした。
私は耳を塞いでそこにしゃがみ込んだけど、子どもたちの顔が浮かんだ。
「子どもたちのいる山じゃないの、まさか、まさか」
無我夢中で車に飛び乗って走り出した。あんなにスピード出してよく事故らなかったよ。とにかくすごく集中してた。
ただただ、子どもたちのことが心配だった。
山に登り始めると木の焼けた匂いが窓を閉めた車の中でもわかるようになった。
「木が燃えてる。お願い、無事でいて」
いつもの場所に到着して車から降りると、辺りは火と煙でよく見えなかった。
けれど、光る何かが見えて、光の方に歩いていった。誰かの懐中電灯かもしれない、と思った。
近づくとだんだんはっきりと人が立っているのがわかった。
「大丈夫!」
私は大声で叫びながら走った。
すると立っている人が振り返った。手に光る丸い球体を持っていた。その足元に子どもたちが倒れていた。
「誰?何してるの?」
「え!?」
彼女は、言葉ではない言葉を使って私に語りかけた。
起こったことが映像として私の頭の中に浮かんだ。
火球が落ちたとき、子供たちは岩の影に隠れたけれどあまりの衝撃で体中の骨が折れて死んでしまったんだ。それで彼女が光の玉を使い、彼らの体を治しているのだった。
「うん、わかった。もう少しなのね。お願い、助けて」
彼女は、また治療を始めた。すると、体が地面から数センチ浮かんだ。
両手を広げて、光る玉が胸のあたりに浮いている。
光が子どもたちを照らしている。
私は待った。
長く感じた。自然に両手を合わせて神に祈っていた。
「彼女が何者かわからないけれど、力を尽くして、子どもたちを助けようとしています。理解ができないけれど、私は信じます。どうか、子どもたちを助けてください」
何分たったか、わからないけど、すーっと心に安心感と暖かい感謝の気持ちがあふれてきた。
「終わった」
私は目を開けた。
「いない!子どもたちは?!」
彼女はいなかった。
私は子どもたちに走って近づいた。みな、寝ているようだった。
「起きて!」
辺りの木が燃えている。急いでここから離れて病院にみんなを連れて行かなくては。
「ああ、おばさん、ぼく」
「気がついた。良かった。みんなを起こして。とにかくここから離れよう」
みんな、気がついて、急いで車に戻った。
私は振り返って彼女を探したけれど見つからなかった。
「ありがとう」
心の中でつぶやいた。
それから病院に行って、みんなの家に連絡して、警察や消防と大変だった。
みんなは軽い骨折があったけど大したことはなかった。
それより、原因がわからない嘔吐や下痢、赤血球、白血球、カリウムやいろいろな数値が異常に上下して、不安定な状態が1ヵ月以上続いた。
私は彼女のことは黙っていた。
夢だったかもしれないと思ったんだよ。
おばあちゃんは、話し終わって、コーヒーを飲んだ。
マリアが興奮して言った。
「その光を浴びた子どもが私のママとパパ!」
「そうだよ。あなたたちは、特別な子どもたち。他の人に溶けこんで生きないといけないよ。特別だとわからないようにね」
おばあちゃんの話は、本当は続きがあった。
みんなを治してくれた人と、おばあちゃんはまた会って、いろいろな不思議な体験をしているけれど、その話は、まだルイたちに話していなかった。
けれど、光を浴びた子どもたちの2世が揃ったら、
話さなくてはならないだろう、もう、その時が近いだろう、と感じていた。
「その時には、彼女にも来てもらおう」
おばあちゃんは心の中でつぶやいた。
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