第6話 ルイは不思議な子

マリアとサラは並んで階段を上がった。

マリアが話しかけた。

「おばあちゃん、サラが来て嬉しそうだった」

「私、もっと色々と質問されると思ってました。どんな人が来たのか知りたいだろうから」

「そうなの?だって嫌でしょう、それ。私たちは自分がされたら嫌なことはしないわ。でも、正直言うと、サラのこと、もっと知りたい」

マリアはサラに目くばせしてニッコリ笑った。

「ルイのことはどう思った?」

「どうって、ええと、とても優しい良い人だと思います」

「そう?良かった」

マリアは「ふう」とため息をついた。

「良かった、人によってはルイのことが怖い、会いたくないっていう人もいるのよね。これからよく会うようになると思うし、ルイは不思議な子なのよ、だんだんわかると思うけど」

「そうなんですね」

サラはさっき感じた不思議な感じが自分だけではないんだと知って、かえってちょっと安心した。

 マリアがサラの髪を見て言った。

「私ね、近くの美容室で働いているの。見たところ、サラは髪の色も染めてないし、とっても健康な髪ね。いつもショートヘアなの?今度、私にカットさせてね」

「あの、私、美容室には行ったことなくて、いつも母が切ってくれます」

「そうなの!お母さんは美容師?」

「いいえ、小さい時からずっと。私が美容室が苦手なんです。それで母が」

「そうなんだ。じゃあ、美容室じゃなくて、私か、おばあちゃんか、サラの部屋でなら、大丈夫かな?」

「すみません。それなら」

「それから、そのワンピース、すごく素敵。どこで買ったの?ビンテージでしょ?」

「これは、母が若いときに着ていたワンピースです。古いけど好きで」

「そうなのね。お母さんの」

マリアはちょっと黙って下を向いた。何か考えているようだった。

「お母さんの服が着れるのってステキね。黄色がよく似合ってるよ」

「ありがとう、服を買うのもお店が苦手で」

「なるほど、そういう理由もあるのね、ああ、着いた、3階」

二人はサラの部屋に入り、バスルームに行った。

「さて、では説明します」

「はい」

「お湯はこちら、温度調節はここ。シャワーも強さが調節出来て、ここをこっちに回すと強くなるからね。温度調節しながら強さも調節するからちょっと難しいの、やけどに気をつけてね」

「ありがとう、聞かなかったらわからなかった」

「でしょう?でも慣れると便利よ。じゃあ、おやすみなさい。またね」

「おやすみなさい」

「私の部屋は向かいだから、ほら、あそこ。今度遊びに来てね」

「ありがとう」

サラはドアを閉めて一人になった。

ソファに座って、寝っ転がった。

おばあちゃんもマリアもルイもみんないい人だった。新しい生活に不安があったけど、少し安心した。明日は日曜日で仕事はお休みだけど、もう寝てしまおう。

引っ越しで疲れて、お腹が一杯で、美味しいコーヒーですごくリラックスしている。

サラはバスルームをちょっと見たが、さっさと顔を洗ってパジャマに着替え、ベットに入った。初めてのベットで眠れるのだろうか?と思って間もなくスースーと気持ち良い寝息を立てて寝てしまった。

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