第5話 ルイ

ドアが開いて、ルイが入って来た。

「おばあちゃん、ただいま、今日はミートボール?嬉しいことがあったんだね」

ルイはサラを見て、にっこりした。

優しい笑顔、色が白くて目鼻立ちがしっかりしている。

ルイの瞳にも光があってキラキラしている。

「おばあちゃん、紹介して」

ルイがおばあちゃんを促した。

「はいはい、サラちゃん、こちらはルイ。お向かいに住んでるの。マリアとは幼なじみ。ああ、マリアは私の孫ですよ。ルイ、こちらはサラちゃん、今日から3階に住んでくれるの」

「サラ、よろしく、朝、トラックを見て、誰か引越してきたのかな?と思ったんだ。僕はルイ。ルイって呼んで。それでなんでここにいるかと言うと、僕はおばあちゃんの料理が美味しすぎて毎日のように夕食を食べにくるんだよ」

ここまで言うとルイは、次はあなたの番ですよ、と促すように黙ってサラを見た。

「あ、あの、今日からこちらにお世話になります。サラです。よろしくお願いします。あの、おばあちゃんのミートボール美味しいです」

「そうでしょう」

「そうだろう」

マリアとルイの声が揃った。そして、二人は大きな声で笑った。

「サラちゃんも都合のいい時は夕ごはんを食べに来てちょうだいね」

おばあちゃんがニコニコして言った。

「サラも来たらいいよ」

マリアとルイの声がまた揃った。そしてまた笑った。


 おばあちゃんとマリアは近所のレストランのメニューの話からテレビで話題になっていることまでいろいろな話しをした。ルイは2人の話しをにこにこしながら聞いていた。ルイはあまり話さなかった。けれど、ただ、いるだけなのに、ルイのところからまあるい光が出て部屋を包んでいるように思えた。暖かい柔らかい優しい光。サラは2人の話しを聞きながらどうしてもルイを見てしまっていた。惹きつけられてしまう。こんな人には会ったことはなかった。

「不思議」

サラは小さく呟いた。


 食事が終わり、おばあちゃんにはくつろいでもらって、片付けをマリアとルイとサラでして、ルイがコーヒーをいれた。

サラはそのコーヒーがあまりに美味しくて驚いた。ほんとうに美味しい。サラは目を閉じて、そのコーヒーの香りと味を感じた。

サラの表情を見ておばあちゃんが言った。

「サラちゃん、ルイのいれたコーヒーは美味しいでしょ。私はこのコーヒーを飲んで、ああ、今日もみんなが元気に一日を過ごせた。神様、ありがとうございますって思うのよ」

サラはおばあちゃんにうなずいて同意した。

「はい、今日はおばあちゃんの本当に美味しいミートボール、パンとサラダも美味しくて、ルイのコーヒーも美味しくて、引越しの疲れはすっかり取れました。ありがとうございました」

「こちらこそ来てくれてありがとう。今日はゆっくり休めるといいね」

「はい、私、先に休んでもいいでしょうか」

「もちろんですよ。おやすみなさい」

「あ、カップはそのままでいいよ。コーヒーのことはいれるところから片付けまで全部僕がするんだ」

「ありがとうございます」

「私、一緒に行ってお風呂のこと説明する」

マリアが席を立ってドアを開けた。

「ありがとう」

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