第4話 マリアとの出会い
部屋の間取りはサラの部屋と同じだったが、おばあちゃんの部屋には真ん中に大きい長方形の机がある。椅子は6脚もある。
一人暮らしでないのかしら?サラは不思議そうに大きなテーブルを見ていた。
「サラちゃん、こっち来て、お皿を運んでちょうだい」
「はい」
サラは台所に入った。台所はフライパンや鍋が壁いっぱいに掛かっている。
棚にはスパイスや調味料がいっぱい並んでいる。
そして、トマトソースとニンニクの本当にいい匂い。
サラはお腹が急に減ってきた。
おばあちゃんは大きなお皿にミートボールを注いだ。
「これくらいなら食べれるかしら?おかわりはたくさんありますよ」
おばあちゃんはサラがどれくらいご飯を食べれるのかがわからないのでミートボールを少なめに入れた。
少なめと言っても大きいお皿がもりもりになっている。
「ああ、はい、ありがとうございます」
サラはお皿を机のランチョンマットが置いてある上に置いた。
その時、ドアが開いて、女の子が入って来た。
「おばあちゃん、ただいま、お腹減った‥」
女の子はサラと目が合って、声が小さくなった。
「こんにちは、私、マリア、はじめまして、えーと、あなたが、今日引っ越ししてきた人?」
マリアはちょっとびっくりしたけど気を取り直して自己紹介した。
明るい笑顔、声は大きいというよりは良く通る、透明な明るい音色。たとえたら、夏の青空のような声をしている。
体はカモシカのように細い。
大きな目は光が入って輝いている。
サラは一瞬、マリアの美しさと明るさに圧倒されて、声を出さずにうなずいた。
声が出なかった。
きっとこの人は誰とでも仲良くなれるんだろうなあ、と思った。
「マリア、おかえり、今日はミートボールですよ」
「ミートボール!」
マリアは台所に入っておばあちゃんにハグをした。
「おばあちゃん、ありがとう。何日も前からミートボール食べたかったの。おばあちゃんはマリアのこと、何でも知ってるね」
サラは自己紹介をし損ねた。完全に圧倒されている。
マリアはお皿をとっておばあちゃんに渡した。
おばあちゃんはお皿いっぱいにミートボールを入れた。本当に山盛りに。
マリアはリビングに戻って、ダイニングテーブルの引き出しから自分の分のランチョンマットやフォーク、ナイフ、スプーンを取り出した。
サラはマリアを立ったまま見ていた。
マリアとまた目が合った。
「あの、今日からお世話になります。3階に引っ越してきましたサラです」
「サラ!私の大好きな名前だわ!よろしく!私も3階よ。サラはラッキーね。このアパートに住めるなんて。素敵なところよ」
おばあちゃんが台所から2人に声をかけた
「パンとサラダを取りに来て」
「あ、はい」
「はーい」
マリアはサラの肩を抱きながら台所に入った。マリアはパンが入った大きな平たい木の器、サラはサラダが入った大きな丸い木の器を持って来た。
サラはドギマギしているが楽しいと思った。
おばあちゃんも来て、みんな食卓についた。
「待ち切れない。おばあちゃん、いただきます」
マリアが大きな音を立てて両手を合わせ、美味しそうにミートボールを食べはじめた。
サラは自分が食べるのを忘れてマリアを見ていた。
「サラちゃんもどうぞ食べてください」
おばあちゃんがサラに声を掛けた。
「あ、はい、ありがとうございます、いただきます」
サラはミートボールを口に入れた。
やっと口に入る大きなミートボール。
口の中で柔らかく崩れて行く。
トマトソースと何かのハーブの香りが口の中に広がって、幸せな暖かい気持ちになった。
「美味しいです」
サラはおばあちゃんに言った。
「良かったわ。サラちゃんのニコニコ顔で気に入ってくれたのがわかりましたよ」
私がニコニコしていたの?
サラは自分のことなのに少し驚いた。
その時、ノックがした。
「ルイ、おかえり、入って」
おばあちゃんが声を掛けた。
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