第3話 夕食への招待

 ダンボールは全部空になった。

「はぁ、やっと終わった。疲れたー」

 サラは大きくため息をついた。体の中の最後の力が息になって出て行くような気がした。あとまだ、ダンボールを片付けなくてはいけない。山になっているカラになったダンボールを恨めしそうにジッと見ていたが、気力を振り絞って立ち上がった。


 ダンボールを束ねていると誰かがノックした。

 サラがドアを開けるとおばあちゃんが立っていた。

「どう?終わりそう?」

おばあちゃんの声はとても柔らかくてゆっくりしている。

「はい、もう終わりました。あの、ダンボールはどうしたらいいでしょうか?」

「ダンボールはね。一階の裏にゴミ置き場があるから、そこに出しておいたらいいよ。それで、サラちゃん、もう夕方でしょ。夕食はどうするの?もし良かったら今日は疲れているだろうし、これから買い物行って作るのも大変でしょ?うちで食べない?ミートボールなのだけれどね」

サラは驚いて、どう答えたらいいのかわからなかった。行った方が良いのか、行かない方が良いのか。

「お父さんには伝えてあるの。今日は夕食を一緒に食べるかもって」

ああ、それなら、行った方が良いかもしれない。

「ありがとうございます、あの、ダンボールを下ろしてから伺います」

「わかったわ、じゃあ後でね」

「はい」

サラはダンボールを3回往復して1階まで下ろした。汗をかいたので、一度部屋に戻って、水を飲み、汗を拭いた。

「着替えた方がいいよね」


 さっきまで立ち上がるのもイヤになっていたのに、「おばあちゃんのミートボール」という言葉になぜか力をもらったような気がした。


 サラはワードローブを開けた。木のいい匂い。贅沢な気持ち。さっき入れたばかりの服を取り出した。昨日までと同じ服なのに高級でステキに見える。

「不思議」

と声に出して言った。


 サラが選んだのは黄色いワンピースだった。

お母さんが若い時に着ていた服、レトロなデザインだけどサラは好きだった。


 1階まで降りてドアをノックした。

「はーい、どうぞ入って」

おばあちゃんの元気な声が聞こえた。

 「あの、おじゃまします」

サラはゆっくりドアを開けて中に入った。

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