2章 神がいつも俺に微笑むかと思ったらそんな事はなかったぜ
2-1 ボスを倒したらする事といえば
「「ステータス確認」」
森林王を倒した翌日、2人はとりあえずギルドのフリースペースに来ていた。
とりあえずステータスを確認する。宿屋で一晩過ごしたからMPSPは全回復しているはずだ。
・ツバサ
HP400 MP11 SP80
魔法:なし
スキル:ステータス確認 気刃 スキル・ドロー
・ルリ
HP220 MP180 SP30
魔法:ファイア・バレット レイ・バレット
シャイン・スピア ファイア・ウォール
アイアン・フィスト グランド・ランス
アイアン・ツイン・ハンド
キュア アクア・フォール
スキル:ステータス確認 魔法解析
スキル解析 アゲイン
両者、森林王を倒した事でかなり上がっているようだった。
特にルリのMPが尋常じゃないくらい増えているし、魔法の数も昨日の討伐依頼に出発する前の倍近くになっている。
魔法の数、使用可能回数の多さは戦術の幅が広がる。非常に頼もしい。
一方、ツバサは脳筋に磨きがかかっている。
MP1しか増えてないのはギャグだろうか。
スキル・ドローという神がかったスキルを習得してはいるが、1日1回限定だ。ガチャの納税かよ。
しかも気軽には使えないと来ている。基本の戦術には組み込めないな。
「ツバサ、ツバサ」
考え込むツバサにルリが声を掛けてくる。
この名前2回呼び、最近よくしてくるけど癖なのだろうか。
「昨日も思ったけど、このパーティーのリーダー、ツバサがいいと思う」
どういう事かと思っていると、ルリが続ける。
「ツバサ、作戦立てたり、指揮するの、上手い。森林王を倒せたのはスキルもあるけど、当てられたのはツバサの作戦が上手くいったから」
そういう事か。
学校ではあまりそういうリーダー的役割をやったことはなかったはずだが、ゲームではメンバーとチームを組み、そのリーダーを務めたことがある。その経験だろうか。
「まあ、パーティーといっても2人しかいないし、リーダーやってもいいけど、ルリはいいのか?」
「いい。ツバサの作戦で死ぬなら、仕方ないと思える」
無表情だが、力強い主張。
多分、お世辞でも何でもない素直な意見なのだろうが、命を預けるってのはそう簡単な事じゃない。
そして、ルリもそれを分かって言っているというのもツバサには伝わっているのだが、それが少々気恥ずかしい。
「あなたをとても信頼している」と言われているにも等しいのだから。
「わかった。じゃあリーダーやるけど、あれだ、俺もルリの事は信頼してるからな!」
「……急に、恥ずかしい事言ってどうしたの?」
ちくしょうが!
ちょっとでも良い感じの雰囲気を期待した俺が馬鹿だった!
そもそも相手はルリだ、ルリなんだぞ……。
男の本能的なあれに乗せられて行動したことを、ツバサは心底後悔した。
「……。まあ、気を取り直して、もう1つ決めておきたいことがある。スキル・ドローの運用についてだ」
「スキルの詳細は、私も解析で見たから、ツバサの言いたいことは何となくわかる」
なら話は早い。
「スキル・ドローは強力なスキルだけど、ランダム性が強すぎるのと、発動したら次に使えるようになるまで丸1日かかる。そこで、『現状の手札でどうしようもない状況』、もしくは『どちらかの生命の危機』。まずこれを基本条件としたい」
ツバサが危惧しているのは、スキル・ドローの発動後に『そういう状況』が来る事だ。
特に後者。スキル・ドローの使用タイミングを見誤ったが故にどちらかが死ぬ事だけは何としても避けなければならない。
「うん、私もそれでいいと思う。あと、使った後はあぶない状況を避けるように、行動しよう、ツバサ」
ルリは首肯し、補足する。
「そうだな、それが安全だ」
「次に、わたしから、いい?」
「どうした?」
「今後の、私たちの方針。お金は入った。まずパンを買って、そのあと2人とも装備を整えるべき」
おかしいな、今日はルリも宿屋の朝食を食べているはずだが。
とはいえ、別に否定する事でもない。パンを食べたいなら好きにすればいい。昨日も、そのパンのおかげで助かっている事だし。
パンはさておき、ルリの言っている事はツバサも言いたかった事でもある。
「そうだな。俺の剣は昨日砕け散って無くなったし、ルリも装備なくなったしな。金はあるんだ、この町で一番の装備を揃えよう」
「……あと、普通の服も買っていい?」
少し恥ずかしそうに、ルリが言う。
ちょっとドキッとするからそういうのやめて欲しい。
そういえば下着も燃やしたんだったな。
「それは、まあ、もちろん」
「……ありがとう。じゃあ、さっそく、買い物したい。この服、早く着替えたい」
ルリの服は白の薄手のワンピースだ。
昨日も思ったが、銀髪ロングのルリには抜群に似合っており、どこかの名家のお嬢様かと思うほどだ。
「今の服も、いいと思うけどな」
自然とそんな言葉が出てしまい、ツバサは自分でも驚いた。
これじゃまるで口説いてるみたいじゃないか……。
無意識にスキル・ドローで何か変なスキル習得してしまったのかと疑いたくなるが、そもそも今は発動できない。完全に自分の意思である。
「! この服、生地が薄いし、その、私らしくないから、恥ずかしい……の」
平然と自慰行為がどうだの言う割にこういうのは恥ずかしいらしい。
お互い気恥ずかしくなり、2人は昨日の報酬を半分に分け合って、ひとまず別行動で互いの買い物を済ませる事にしたのだった。
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