第6話実はね&聞いて②

 いつしか夕日に照らされた女神の表情が焦りのようなものに満ちていた。


「『二人とも久しぶり。私だよ私』」


 まるで俺俺詐欺のような言い方……って


「「もしかして!?」」


 そう、声は何となく今までのまま。なのにその雰囲気は明らかに目を覚まさなくなっていた幼なじみのものだった。懐かしい気分に浸りながら、しかし罪悪感も込み上げてくる。ただ僕が喋る間もなく彼女は話しはじめた。


「『今までの事は、うっすらだけど分かってる。時間が無いから今は話させて! ……端的に言うと私はもう死んでしまうの。同時に女神様にも会えなくなっちゃう』」


 もう話が急すぎて僕も彼女も唖然とするだけになっていた。女神……いや、僕の幼なじみは焦って、それでも言葉を選ぶようにして続きを話す。


 「『……私はね、幼なじみってだけじゃなくて、あなたのこと好きだった』」


 そう言われて僕の心は赤と黒が渦巻いたように、しかし、そこには確かに他の色も生まれた……


「『でも、今言いたいのはそこじゃない、女神様のこと。彼女は勘違いだと思い込もうとしているけど、私の気持ちじゃない、ひとつの気持ちとしてあなたのことが好きよ』」


 見てきたかのように、また当の本人のように語っていく。まただ、また他の色が僕の心の中に……


「『わかれるとしてもしっかり区切りをつけて、終わってね……』」


 そうして夕日が沈んで行き、教室は一時だけの人の心のように色を変えていく。彼女の髪の色もまた、上から少しずつ影っていき瞬き一度すると、すでにポカンとした女神の顔があった。まだ話せてないのに! あの時のこと懺悔ざんげもさせてくれないのか!? 僕は――





 女神もどうやら今の話は理解していたようだ。終わりの時も何となくあと少しだと、感覚的に分かるらしい。『「『ひとつの気持ちとしてあなたのことが好きよ』」』その言葉を何度も胸の中で反芻はんすうしている。やがてその時が来た。


「『二人とも……頑張ってね』」


 そう言って作ったような笑顔を見せた。僕達は結局、なんの夢を見せられていたのだろう? この時間は……。段々と色を失いその場から消えていく女神の顔は最後の最後に濁った灰色表情を見せたかと思うと、パッと白くなっていた。

 

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