第4話独白&自認
朝六時半、目覚まし時計の音がして起きる。身支度をして、朝食を食べる。途中で喉が渇いたことに気づくと、母さんからタイミング良く500mlの牛乳パックが差し出される。それを受け取った。
僕には仲のいい幼なじみがいた。幼なじみはとにかく完璧で、容姿、勉学、スポーツ、音楽、絵にコミュニケーションと非の打ち所がなかった。そんな彼女も幼なじみの僕といる時は愚痴ったり、少し抜けていたりして一緒にいて楽しかった。だが、彼女と平凡な僕がただ一緒に仲良くしていることを周りは気に入らなかった。次第に僕は周りの声に
しかし彼女はしつこく僕に構い続けてくる……正確に言うなら構い続けてくれた。こんな僕に。そうしてある日帰りについてくる彼女に口にしてしまった。
『僕なんかに構うなよ!!』
伸ばされた彼女の手を払い除け、僕は赤信号の横断歩道を走って渡った。直後には真っ赤な液体が空中にあった。冬だったからだろうか。余計に鮮明に紅く、その真白いカーペットを染め上げた……僕の幼なじみが目を覚まさなくなったのは僕のせいだった。
よく考えてみれば、僕は自分のことばかり考えていた。彼女に他に友達がいたのか。それが誰かさえ知らなかった。
ストローを外し、パックに差し込んで一気に牛乳を飲み干す。ここ最近はただ同じことを繰り返しているようにしか思えない、何となく無機質な生活をしているようだ。
「いってきます」
と口にして七時五十分、今日も学校へ向かった。
◇◇
複雑な気持ちだなんて言葉じゃ言い表せない。学校から逃げてきて部屋に閉じこもった後、
流石に翌日には私に尋ねてきた。
「どうしたの?」 「……」
でもそれ以外は何も言わず、扉の外でストンッと音が聞こえた。いつも同様、私から言うまで待ってくれている。
「少しはなしをしていい?」
しばらくしてママはそんなことを口走った。私は重たい口を無理やり動かし、小さな声でいいよと言った。
「ありがとう。これはお母さんが作ったお話なんだけどね、ある男の子、女の子と女神様のお話。」
女神?何を言いたいんだろう。
「女の子は男の子のことが大好きで、男の子も女の子が大好きだった。それを応援したくって女神様は実際にまじかで見ながら応援しようとおもったの。」
「それで……?」
気になって、気づけば質問していた。
「でも女神様がおっちょこちょいで、男の子と女の子の友達の意識を取っちゃうの。もちろん男の子と女の子は違和感を抱いて、結局色々あって、女神様のことを聞く。普通なら疑うけど、知ってる人からすれば彼女の凄い変わりようから納得せざるを得なかった。」
変な話だと思った。でも自然と聞き入ってしまう。
「そこからなんだけど、男の子は女の子と付きあうことになって、女神様は喜んだ……でも、女神様が男の子を好きなのは誰もが見ればわかった。もちろん私も分かってた、それで気が弱かったのね。譲るって言い方は変だけどそういうことになっちゃった。男の子も何も言わなかった。あの男クソね」
ママからのまさかの発言に驚く。いつもは悪口なんて言わないのに。しかも多分これはママの話だ。主語が途中から私になってたし怨念が多々。
「何が言いたいか私もよく分からなくなってきちゃった。んー、恋するのは人を輝かせるけど、人の心は諸行無常だし、恋は人を愚かにもするという事ね。それを自覚して、それでも向き合って行けると少しはマシになるかもしれない」
何となく言っていることは分かる。最後にまあ、今は分からなくてもいずれわかるわ、とママは言いたいことを言ったとばかりにトットットッと階段を軽快に降りていった。
……私も愚かになってたんだよね。でもやっぱり諦めない。ママのおかげでまた向き合えそう。そう思い、真っ暗にしていた部屋のカーテンをあけると朝日が差し込んで来た。
「もう朝だったんだね」
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