第3話どうして&なるほど
いてて……明日も彼女との時間があるからって浮かれて歩いてたら人とぶつかってしまった。本当に申し訳ない。
「『あ!ごめんなさい!!』」
「いえいえいえ、こちらこそ前をちゃんと見てなくて……」
あっちも謝ってくれているが、悪いのはこっちで……なんというか申し訳なさすぎる。この道は、出会いのかどという場所で必要としているもの同士、人同士が見つけられるとかいう。ただぶつかりやすい角道なだけだと思っていたけど、僕と彼女はここであったから、お互い必要としているかはさておき半分あっているかもしれない。
彼女と出会ったときのことを思い出して(にやにやしてないよ)いると目の前の女の子は僕を見てまるで石像みたいに口をあけて固まっている。やっぱりにやにやしているかもしれない。変質者じゃないよ!
「あ、あのほんとにごめんね」
「『……』」
やっぱりとまっている。恐る恐るその子の肩をツンツン……ツンツンツンビクッ!!あまりの驚きようにこちらも驚く。
「『っ! ごめんなさいでした!!』」
その一言と、真っ赤な表情見せ、その子は一目散に来た道を戻って行った。風邪だったのかな? そういえば、同じ学校の制服だったし、妙に親近感があった。話したことあったけ? 今度学校であったら謝罪を込めてなにかしてあげようと思った。
◇◇
彼との初二人掃除から1週間ほど、やっと彼と普通に話せるようになった。と言ってもまだ緊張はするし、距離が近くなると手が震えて、後ろでいつも手と手を結んで、ぎゅっとしないともちろん無理っ! 頬が熱くなって鏡を見なくても赤くなっていると分かる。言葉にはできないけどやっぱり彼と一緒にいるのはいい。今日も掃除がなくても一緒にたくさん話せた///
彼のことだけではない、目を覚ました彼女も明日から学校に来ることになった。生活がどんどん楽しくなっていく。いい事ばかり。こんなにもらえる私は幸せだ……
翌日、学校が楽しみすぎて、私はいつもよりはやく登校していた。彼はいつも来るのがはやいから。きっと今日もはやく来ていると思い、学校まで。なんとも言えない高揚感を覚えながら教室に走っていく。そして彼を教室にみつけ教室に入ろうとして……やめた。
「昨日はごめんね」
「『私も何も言わないで一人で帰ってしまってごめんなさい』」
「でも、この間は明らかに浮かれて歩いてた僕が悪いから、何か謝罪させてよ! どっか行きたいところとか、欲しいものとか」
「『じゃあ……で。』」
重要な最後の部分が聞き取れなかった。それもそう。二人でコソコソ話のような姿勢で話している。嫌な気分になってきた。話してる相手があの子じゃなければ、彼の話し相手を一瞬で嫌いになってたかもしれない。ただやっぱり会話の内容が気になる。そのせいかどうしてあの二人が一緒にいるの? いつの間に仲良くなったの? 応援してくれるんじゃなかったの? といった黒い感情が私の中に渦巻いていく。
今私どんな顔してるんだろう? きっとひどい顔。そんな顔でどうして彼と話せるだろうか? どうしてあの子と話ができるだろうか? 結局その日は学校を休んだ。
❖❖
例の彼と話している時、彼女が見えた。そう私は見えていた。見えていて見せつけるように彼を引き寄せて自分の声と思えないほど艶かしい声で……こう、言っていた。
「『じゃあさ、私と付き合って?』」
彼女と彼は互いに好きで、叶うはずもないことを。それより自分がやろうと思っていた事、すなわち彼女と彼を結ぶ事に反する事を。でも不思議と自分の意思には反している気がしない。もうダメだなぁ。下界に降りたのが間違いだった。この体の両親には申し訳ないけど、もう天界に戻ろう。それで……
「なるほどね……やっぱり君は君じゃないんだね」
「『!? な、なに? どういう……』」
「最初にあった時から違和感はあったんだよ? 印象が変わっていて気づかなかったけど僕と君は……いや、分からないならいいよ、もし記憶がないならそれでいい。思い出さないで済むから……」
そういった彼の表情はどこか虚空を見つめているかのように、天界で見ていた時は見なかった、なんとも言えない表情をしていた。
一体私はどんな子の体に入ってしまったんだろう。
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