第2話奇跡&邂逅
「『よいしょっっと』」
私は、二人と同じ学校に通っていたが、今意識不明になってしまっているある女の子の体を借りることにした。申し訳ない気もするから、この子が起きた時には全力で恋を応援しようと思う!
その後両親が現れ、泣きながら私に抱きついてきたり色々あったが、やっとまともに動けるようになった。こういう下界への降り方は時間軸を負の向きに動かすことになるので、たくさん制約がある。何が言いたいかと言うと、今は二人が掃除を始めたくらいということになっている。
私が今回しようとしているのは、女の子の方と仲良くなって、アドバイスをすること。こっちの方が手っ取り早いからね。
さっそく学校に着き教室を覗くと、二人の顔に夕日が差し込んでいて……いや、二人とも顔を真っ赤にしてモジモジしているところだった。ほんとになんでかなぁ。
結局二人ともそのまま沈黙を守り掃除を終えた。男の子の方は、「また明日っ!!!」と言ってものすごい勢いで帰っていってしまった。ちょうどよかった。そう思い教室を再び覗く。
「『!?』」
一瞬、いつか見た美の女神様かと思ってしまった。そう思うほど、夕日に口付けされたその姿、横顔、長い髪、全てが美しかった。
「『やっぱり恋する女の子は素敵だね。』」
気づけばいつものノリで独り言を発してしまっていた。
「ふぇっ!?.......」
◇◇
それは彼のことを考えているときだった。やっぱり好きだなぁ。そう思っていると……
「『やっぱり恋する女の子は素敵だね。』」
「ふぇっ!?.......」
ほんとにびっくりしてしまった。いきなり話しかけられたことにではない。そこに立っている彼女に見覚えがあったから。
しかし、ただ見覚えがあるだけじゃなく、何故か印象が全然変わっている。そこに神々しいアウラを感じた……気がする。
「あ、あぁっ、うっっ」
それよりも気づけば、自分の瞳から大粒の涙が溢れ出ていた。
「良かったよぉ〜。やっと目覚ましてくれるんだから!」
そう言って彼女に抱きついた。ちょっとびっくりしていたけど。そんなの構わない。嬉しくて嬉しくて。腕に力が入りより一層強く抱きしめる。
「『えっ!?ちょ、ちょっと、ど、どうしたの?』」
「どゔぉっで、なにがぁぁぁ」
もう自分でも何言ってるか分からなくなったので、一旦落ち着かせてもらった。
しばらくして、落ち着いたから話の続きをすることになった。
「それでっ、ずぅっ、いつ起きたの?」
何やら彼女は考える仕草を見せている。まだ時間が経ってなくて頭が整理できてないのかな? やっと、ポンッと手を叩き納得したような様子で
「『……ちょっと前、かな?』」
「いやいや歩けないよそんなの!」
「『いや、でも実際歩けてるし』」
もうちょっと時間が経ってから聞いてみようと思った。
「ふぅー、何はともあれ良かったよ。で、恋するなんちゃらってなに?」
彼女は、えっ? そこ掘り返す? みたいな顔をしたけど、すぐに答えた。
「『んー、あの男の子のこと好きなんでしょ?』」
「……見てたの////……?」
自分でも照れすぎだと思っていたけど周りから見ればすぐに分かるらしい。鈍感なこの子でさえわかるんだから。
「『私は応援するよっ!二人が仲良くなれるようにっ。』」
そう言ってくれた。嬉しいな。誰かにそれを応援されるって。それだけで、頑張ろうって思える。
「ありがとっ!」
そうして懐かしい彼女との会話をしてその日を終えた。
❖❖
ミスったなぁぁぁぁぁと深く反省している。ちゃんと調べてなかったけど、多分私が身体を使わせてもらっているこの子、あの子の知り合いだ。いや、それよりももっと深い親友って感じがした。彼女が泣いて、心配そうにするから気づいて話を合わせられたけど。盲点でした、はい。まぁ、最初から仲がいいのは助かったけどねっ。
「『まあ、とりあえず第一段階はギリクリアってことでいいね。』」
でも、何故だろうか胸が苦しい。これは私の感覚じゃない……するとこの子の感覚?
『「『私は応援するよっ!二人が仲良くなれるようにっ。』」』
そう言った時からずっと残るこの感覚は、なんなのだろうか。
……一に苦しい。二に切ない。三に諦め。四に後悔。五に
なーんて考えながら歩いていると、誰かとぶつかった。
「『あ! ごめんなさい!!』」
「いえいえいえ、こちらこそ前をちゃんと見てなくて」
そうしてその顔を見た時、不意に体がふわっと軽くなった。
なんだろう、何なのだろうほんとうにこの感覚は.......
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