彼と彼女、彼女と女神、そして女神と彼
輝常
第1話 プロローグ&放課後の教室
真っ白な立方空間の中。そこに、1人の少女がいた。いや、もっと神秘的な、なにか……純白の布に覆われた体はその上からでも分かるほど美しい体つきで、整った小さな顔立ち、サラサラのその髪も白く、全てがまるで彼女が純粋であると主張するように白い。しかしまた、白はどんな色にも染まるということを人々は忘れている。
私は人間界で言う神様という仕事をしている。いや、仕事と言うのも変にきこえるかも。知っているだろうか? ここには百を超える神がいる。だから、その分仕事も百以上に分業されている。私の仕事は人と人とを結ぶ手助けをする、いわゆる恋の神。
そんな訳だが、言ってしまうと下界でやっているあにめなるものや、まんがなるものほど、純情に満ちた恋は今まで見たことがない。むしろ逆と言っていい。
私、必要かな?そう感じ始めていた頃見つけたものすごく純粋で、お互いを思っている二人のことをあなた達には見てもらいたい。最後まで見届けてもらえると、私も……
もう時間だ。行かなきゃね──
◆◆
やった!やったやったやったやったァァァァァ!!!今日は初めての僕と彼女の2人きりでの掃除の日だ。短い時間しか喋れないと思っていたけど、偶然にも他の3人はいつもサボりで帰るクラスのやんちゃ組!!こんな時にはいつもサボっているクラスのやんちゃ組にも感謝しかない。
「なんか2人だけになっちゃったね?」
彼女が言う。
「う、うんそうだね」
と僕。
「「.......」」
き、気まずい。なにか話すこと探さないと空気がもたない。なにかないのか? 普段はクラスで思ってないことでもペラペラ出てきて話を合わせられるのに、なんでこんな時にだけ……。
冷静になろうとすればするほど、自分の頬が暖かくなっていくのを感じる。いや、どっちかと言うと『熱くなっている』だろうか。
とりあえずなにか話さなきゃ。
「あのさ、普段なにしてるの?」
……やってしまったぁ!いきなり話がよく分からないベクトルに飛んでしまうコミュ障あるあるが、よりによってこんな時にでてしまうなんて。この質問、絶対キモいって思われちゃうやつだ。あー終わった人生終わった。
「君のこと...考えてる、かな」
と彼女。……ん?あー、僕遂に幻聴が聞こえるようになったんだな。新境地ひらけたわー。
しかし、彼女の顔をみると次第に頬が赤くなっている....ような気がする。ゲンチョウジャアナイト??
これで聞き間違いだったら恥ずかしいから、もう一回、聞きたいところだけど……
◇◇
……やっちゃった、やっちゃった、やっちゃった!?どうしよう、私今気持ち悪いこと言った? 言ったよね? なんか彼も変な顔してるし。あーもう、どうしよう。初めて二人だけで話す機会がきたのに最初っからやっちゃったよぉ。なんとか誤魔化した方がいいかな?
「あ!あのねっ!」
「え?...あ、うん」
「卵は黄身が好き?白身がすき?」
「えっ...あっ...黄身、だね」
ご、誤魔化せた……? なにか彼が残念そうな顔をしているように見えるのは、多分私の願望が強すぎるからなんだよね。
「そ、そうなんだ!!私もね断然黄身派なの!気あうねっ!」
「やっぱ黄身だよなぁ!」
「「.......」」
また、これ。話したいことはいっぱいあるはずなのに出てこない。喉の上の方まできて、途中でつっかえて、下に下がっていく。そんな感覚。彼に話しかけようとするといつもこうだったのだ。二人だけの今日こそは何としても、と思ったがやっぱり上手くいかないらしい。
❖❖
『「この子達、お互いのこと死ぬほど好きなくせになんでいつもこうなのかなぁ。てか、男の子の方会話成り立ってなかったし、どれだけ緊張してんのさ。まぁそれも初々しくていいけどねぇ〜」』
私、恋の神の仕事は、少しアシストするだけ……というか干渉のし過ぎは宇宙秩序を崩しかねないから、少ししかできない。でも、久しぶりにこんなのを見せてもらってテンションの高かった私は2人のこと直接応援したくなった。
「『さぁて!いきますかぁ!!』」
そうして、私は初めて下界に降りることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます