真君
突然すいません、私は一年C組の
あ、これは私の心の叫びだと思って聞いて下さい。
いやはや、全く、私は教室で超地味で気配隠密系女子だから誰も友達なんていないんだ。
でも特技があって、人の空気を超読める事と、耳が恐ろしく良い。
あははっ、地味で陰キャな私は何事にも敏感じゃないといきていけないもんで……マジ生きててすいません……。
私が在籍している一年C組は比較的穏やかな生徒が多く、他のクラスよりも平穏だと思うの。っていうか、この学校はイケメンと美少女が多すぎるのよ!?
私の席は窓際で後ろから二番目。私の後ろには新庄君っていう男の子がいるけど……。
初めてクラスで見たときはびっくりしたわね……。なんでここに『ときめきプリンセス! 乙女戦記』の主人公君がいるのよ!? って……。
いやー、マジイケメン過ぎて驚きですよ。しかも負のオーラがヤバい事ヤバいこと。
ゲームやアニメで陰がある主人公ってよくいるけど、新庄くんからはマジで闇の気配をビンビン感じられちゃうから……。
入学当初から教室の女子たちは新庄君に話しかけたくても話せない感じ。時折勇気を出して告白したり、話しかけたりする女子を見るけど、大体玉砕って感じね。
新庄君には噂が一杯あった。いわく暴力男、犯罪未遂男、カラオケで不良を打ちのめす、性格最悪、唯我独尊……、まだまだ色々あるけど、正直いい噂は聞かない。
最近は噂を否定する噂が流れているから真実はぶっちゃけわからない。
まあね、噂は噂でしかないから、私は興味がないのよね。
はぁ、隣のクラスの新庄遥さんのお兄さんだとは思わなかったよ。彼女は運動神経抜群で、部活の助っ人をしているから有名人。可愛いしね。
新庄君が妹さんに向けた笑顔で何人の女子生徒が魅了されたんだか……。あれはヤバいって……。
普段の無愛想な顔とのギャップが……。
それに、私は新庄君たちの前の席だから、新庄君と篠塚さんの話が少し聞こえてくるの。
ヤンキー(仮)篠塚さん。
マジ尊いわ……。だって、ヤンキーぶってるけど、なにこの可愛い生物。
いやさ、顔はもちろん天使だけどさ、性格がすごくいいのよ……。
聞きたくないけど、私、耳が進化しすぎて全部聞こえちゃってるのよ!!
篠塚さんの進化っぷりも新庄君に負けてないのよ!
あんなにツンツンしてたのに、いまじゃ、小声でお互いの名前を言い合ってるし!
二人してヤバすぎるのよ!
なんだってこんな子に悪い噂があるのよって声を大にして言いたい。
でも私は地味子だから言えないけどね……。はぁ、宮崎さんたちが悪い噂を消そうと頑張った気持ちもわかるわー。
で……さっきの会話ってなによ!? マジ聞いててこっちがドキドキしてきたわ!
付き合いたてのカップルか、っていうの! 実際はまだ付き合ってないみたいだけど、もう結婚すれば?
はぁ、私の隣の席なんて野球馬鹿の山田だし……。こいつ全然人の話聞かないし、馬鹿だし、鈍いし、陰キャの私にも普通に声をかけてくるし、うざいし、馬鹿だし……。
いつの間にか休み時間が終わって、数学の先生である担任の真島先生が教室に入ってきた。
淡々と授業が始まる。私も授業に集中しようと思ったが――
「――おい、田中……、シャーペンと消しゴム貸してくんね? 部室で遊んでたら忘れちゃってさ! おっ、それってテツロウのあれだろ!」
おい、なんだって授業中に私に声をかけるの!? そっちの隣の席の性格がきつい松原さんに借りろや! あれってなんだよ!?
「こ、声が大きいよ……、わ、私も消しゴム使うから返してよ……」
「おう! ありがとな! お前だと思って超大事に使うぜ!! あっ、お前髪切った? 超似合ってんじゃん!! テツロウのペットみたいだぜ!」
そ、それ褒めてんの……。
教壇から大きなため息が聞こえてきた。
私達の担任であるクールビューティー真島英梨先生が山田を一瞥する。
「……おい山田、私の数学の時間に騒がしいぞ。……女子と仲良くしたかったら休み時間にしろ」
山田は立ち上がって元気よく返事をした。
「うっす、了解っす!! 田中、休み時間に話そうな! お前テツロウ好きだよな?」
「……だから後にしろと……、全くいつもいつも返事だけはいいな……」
「うっす!!」
クラスは笑いの渦に巻き込まれていた。特に山田が何かしたわけじゃない。でもいつの間にか山田がクラスを笑わせていた。
馬鹿だけど一直線の山田を嫌う生徒は少ない。笑われているわけじゃなくて、微笑んでいる感じ。
「や、山田……、は、恥ずかしいから座りなよ……」
「おう、田中!」
山田はすごく泥臭い笑顔を私にくれた。
本当に後ろの席のスタイリッシュな新庄君とは大違いだ。野球部のリア充のくせに斉藤さんグループには近寄らないし、予測不可能な行動するし……。
なのになんだって私の顔が熱くなってるのよ……。全く、全部山田のせいよ。
ほら、新庄君たちが後ろで小声でいちゃついているよ。『山田ってすごいな……天然か、遥と一緒の匂いが……』『あ、あはは、真ももう少し馬鹿やればいいだろ』『いやはや、ママさんから聞いたぞ、ポメ子さんは子供の頃――』『ば、馬鹿!? や、やめろよ――』なんて言っている。
くはぁ……、心が吐血しそうだった。家族ぐるみの付き合いなんだね……。
深呼吸をして心を落ち着けると、何故か山田が私の机に自分の机を移動していた
ひえ!?
「わりい! 教科書も部室に忘れちまった! 田中、ちょっと見せてくれや……」
「あ、え? ……い、い、いいけど……。はい――」
ちょ、ちょっとまってよ!? な、なんでそんなに近いのよ!? あっ、前の方の席にいる斉藤さんが振り返って生温かい感じで笑ってるし! ……おのれリア充め。
身体の熱が止まらなかった。……や、野球部のくせに汗臭くないじゃん。なんでフローラルな香りなのよ……。
ま、まあ、山田なら緊張しないからいいけどさ……。
「あれ? なんか顔赤いな。熱あんのか? ほれ」
「はひ!?」
山田は私のおでこを触ってきた。私は身体が硬直してしまった……。
『あんり、こいつら付き合ってるのか?』『うーん、聞いたことねえな。ったくいちゃいちゃしやがって』『……ポメ子さんって意外と恋バナ好きなのか?』『ば、ばか……嫌いな女子はいねえだろ……』
や、やめて……わ、私のHPはもうゼロよ……。ていうか、ちょくちょく出てくるポメ子ってどんなあだ名よ……
――あ、あなたたちだけにはいちゃいちゃしてるって言われたくないよ……。
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