わたし、学校に通いますっ!

家族会議が開かれた。

月岡家のリビングルームに両親と俺と祖父母そしてかぐや姫が集まった。

日本人形――かぐや姫をどうするかである。

3日で手乗りサイズから俺と同年代の女子になってしまった。

少し大人っぽく見えるかぐや姫。

「日本人形がこのようなことになるなんてね……でも可愛いわ。うちには女性が少ないからねぇ」

母さんはかぐや姫を気に入っている様子だ。

多分月岡家の家事要員が増えそうだからだろう。

「だいたいここにいるにしても、今は夏休みでさ光崇がいるからいいけど……二学期始まったらどうすんだ?」

父さんが難色を示した。


そうだ、そこまで頭回ってなかった。

両親が難しい顔している.

一方かぐや姫は俺の横でニコニコしている。

人畜無害アピールだろう。

「かぐや姫はここにいてもらうぞ。絶対他所にやるような真似はさせんぞ! 光崇のことを気に入っているし、ばーさんも彼女のことを気に入っている」

じーちゃんは月岡家にいてもらう気満々に対して

「あのなぁオヤジよ、いつものように喧嘩している人を仲裁したり、道に倒れている人を介抱するのとは違うんだぞ!」

とーちゃんが言い返す。


うちのじーちゃんは、困っていればすぐに手を差し伸べるタイプである。

病気で倒れている人はもちろん,、酔っ払いの介抱、迷子を交番に連れて行くなど。

俺が小学校の時、高校生の兄ちゃん3人が喧嘩してて、そこでじいちゃんが仲裁したことがある。うちに呼んで鍋パーティをした。

『外寒いからここで喧嘩せず、うちでやりなさい』と無理やり引きずる形だった。

喧嘩してた兄ちゃん達はどうでもよくなり、最終的にじーちゃんと意気投合していた。そして今、その兄ちゃん達はじーちゃんの会社で従業員をしている。

そういうのもあってか、じーちゃんは『世話焼きおじさん』として近所で人気者である。


今のご時世なかなかできないことだ。

場合によって変質者扱いされるのにと思うがこれもじーちゃんの人徳じんとくだと思う。


「うちには女の子がいないから嬉しいわぁ。可愛いー。癒されるー」

「でしょう。真由まゆさん! ほらかぐちゃん可愛いって!」

母さんとばーちゃんが盛り上がってる。しかもばーちゃんはって勝手に呼んでるし。

かぐや姫も女性二人に褒められて口角をあげる。

「…ということだ。利幸としゆき、あきらめるんだな。ばあさんも真由さんも喜んでる。光崇もな」

「……わかった。家族の一員として認めよう。ただし、彼女には学校行ってもらう」

「そのつもりだ。光崇と同じ学校でいいだろう。俺の知り合いに根回しするから」

「どうだ? 学校に行くのは? かぐちゃん」

じーちゃんに聞かれたかぐや姫は「はい! よろしくお願いします!」と大きく頷いた。


正直かぐや姫が追い出されるんじゃないか心配していた。

追い出してもじーちゃんがこっそり連れて帰りそうだけど。

ちょっと安心した。

「光崇よろしくねっ!」

かぐや姫は俺に勢いよく抱きついてきた。


何も声でない俺。どうリアクションすればいいかわからない。

「かぐちゃん、光崇のことがほんとうにお気に入りなのね。ちょっとさみしいわぁー」

ばあちゃんが呟いた。ちょっぴり俺にヤキモチいているな。







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