第14話
俺の名前は浜崎透だ。それは間違いないようのない、この世界の事実である。
だがしかし、俺の隣にいるこの子の名字は、決して浜崎ではない。さっき、狐白は稲荷と言いかけていたから、本当の名前は表向きの名前は稲荷狐白なのだろうと予測はできる。
………何してるのかな?お義父さーん?いや、本当に。
だってこれ、絶対お義父さんでしょ?仕掛けたの。本来なら、狐白はこの高校を受験していないけど、神様バワーで不正しているし、クラスが一緒になるようにも不正しているしで……名字も一緒ですか?
「………えぇ?」
「これは……ちょっと……」
俺も、狐白も、恥ずかしいと言うよりは、呆れの方の感情が出てきた。これさ、これから友達になる人達に、同じ名字だけど双子なのー?と聞かれた時にどう答えればいいの?まじで。流石にさっきのこーくんのように嫁とは言えないぞ?
「………狐白のお義父さんやりすぎじゃない?」
「……うん、とりあえず帰ったらーーーいや、今すぐちょっとお父さんにやりすぎって送る」
と、狐白が言うと、何やら頭の方に手を持っていき、本当なら狐の耳がある所を触り始める。
そして、次の瞬間、クラス表の紙は一瞬にして変わり、俺の上には全く知らんやつの名前がいて、一番上に狐白の名前があった。
「……うん、これで大丈夫」
「………今何が起きたの?」
周りの人も、突然変わったクラス表に気づきはしないし、気づいた様子もない。まるで、最初からそうであったかのようにしか見えない。
「お父さんにやりすぎだから今すぐに戻して!ってメッセージを送ったの。稲荷一族は離れた所でも耳を触れば、意思の疎通ができるの」
「へぇ……それはまた便利なーーーー」
「え?お父さん……?え?透くんに伝言?………ふぇ!?だ、ダメダメ!そんなこと言えないんだから!」
と、何やら急にあわてふためきだした狐白。一体お義父さんになんていわれたのだろう。少し気になる。
「………なんて?」
「ダメっ!透くんには余計言えないんだから!」
いや、だから何言われたのよ。透くん気になるなー。
……まぁ多分、どっちも地雷だからこれは聞かない方が正解だな。
うん、これは聞かないでおくことにしよう。そうしよう。
そして、狐白の顔の熱も冷めだした頃に、一旦集まることになっている教室へ向かうことにした。
俺たちがこれからほぼ毎日通うことになるクラスは1年2組。一クラスが大体30人で、1年だけで5クラスある。
晴山高校は、四階建てになっており、それが二棟ある。片方が教室があり、もう片方が特別授業で使う棟となっている。
「えーっと…あ、ここか。2階だな」
見取り図を見て、クラスの位置を確認をして、狐白と共にその教室へ向かう途中、何やら周りからものすごく視線を集めていることに気づいた。
これはーーーーあれか、狐白に見とれている奴らの視線だろうな。そんで、隣にいる俺は誰やねん的な奴か。
少し、耳に意識を集中させる。
「お、おい……あの子、めっちゃ可愛くない?」
「うっわ……マジやべぇ……今年は当たりだぜおい……」
「しかし……隣にいるやつは誰だ?……彼氏か?」
「そうだとしたら是非、爆発するように呪ーーいや、どうしたら彼女が出来るか聞きに行かねば………」
「チッ……美男美女か……滅べばいいのに」
おうおうおう、聞こえる聞こえる怨嗟の声が。しかし、狙っているやつがいるのは頂けないな………牽制しとくか。
ちょうど良く、目の間からすれ違うように人が来ているので、それを利用させてもらうか。
「狐白」
「え………あっ」
狐白の肩へ手を回し、俺の方へ引き寄せるようにする。すると、咄嗟だったので、俺の体を掴むようにして寄りかかり、目の前から来た生徒とぶつからなくなる。
「すいません、透くん。私、少し緊張してて気づきませんでした」
「いいんだ。大事な狐白のためならな」
「……もう、バカ」
と、軽く顔を赤らめさせてからペシっ、と俺を叩く。全く痛くないが、これで「いてっ」と言ってしまうのはご愛嬌だろう。
「もう……行くよ」
「仰せのままに」
と、そのまま教室に向かう俺たち。実はこの一連のやり取りで、入学してそうそう大多数の男の心をポッキリおった夫婦として影ながら有名になった。
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