第6話

 娘さんを僕にください!娘さんを僕にください!娘さんを僕にくださーーーーー


 そんな言葉がやけにやまびこのように響いた。隣を見ると、あわあわ……と口を開けた状態で顔を真っ赤にした狐白。


 そして、目の前には狐白のお父さんであるお稲荷様がにこりと微笑んでーーーーー


「うん、いいよ」


「ありがとうございまっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「お父さん!?!!」


 喜びと歓喜でーーーってほとんど一緒か。まぁいいや、それでお礼と共にガッツポーズをしていた。隣で狐白が更に顔を赤くした。


「透くんのことは娘からよく聞いている。是非、狐白をよろしく頼むよ」


「一生かけて幸せにします!」


「うん。10年間、狐白のことを忘れずに、ずっと想い続けてきた君なら信頼できるよ」


「ありがとうございます!!」


 腰を90度折り曲げて頭を全力で下げた。その後、なんとお稲荷様から「是非、お義父さんと呼んで欲しい」と言われ、それを了承したら、限界になった狐白が俺の胸をポカポカポカポカと叩いてきた。全然痛くなかった。むしろ可愛かった。


 その後、それを微笑ましく見ていたお義父さんから、入りたまえと言われ、神社の中へ入った。靴を脱ぎ、どこからともなく飛んできた座布団の上に正座をした。


 目の前にお義父さんが正座をして座ると、白色の三本生えているしっぽがめちゃくちゃ目立った。


「改めて自己紹介をしようか」


 と、柔らかい笑みでお義父さんは言った。


「僕の名前は稲荷神。キツネだったり、仏教の女神と習合されてたりするけど、きちんとしたキツネの神だよ。よろしくね、透くん」


「はい、浜崎透です。よろしくお願いします、お義父さん」


 手を八の字に置いて、深く深くお辞儀をした。隣で狐白がさっきからずっと赤い顔をしている。


「差し支えなければだけど、狐白のどこが好きなったのか教えてくれるかい?」


「お父さん!?!!」


「可愛いし、綺麗だし、声も好きだし、性格も好きだし、笑顔も好きで、めちゃくちゃ優しくてーーーー」


「透くん!?」


 と、こんな感じでめちゃくちゃ褒め倒ししてたら、狐白が赤い顔で、しかも涙も浮かばせたので辞めた。


「ーーーまぁ全部が好きです」


「もう……バカっ……」


 と、しっぽで俺を器用にペシッと叩いてくる狐白。なにそれ可愛い。


 そんな俺たちをニコニコと見つめるお義父さん。何か閃いたのか、ポンッと手を叩いた。


「そうだ、狐白。今日から透くんの所でお世話になりなさい」


「…………はい?」


 と、お義父さんのセリフに狐白がはてなマークを浮かべる。俺もそれを聞いて、はてなマークをうかべた。


「えと……お父さん、それってどういう意味?」


「ん?透くんの所で同棲してみるかい?と言ったんだ」


 同棲してみるかい?同棲してみるかい?同棲してみるかーーーーー


 ……………………


「えええええええ!!」


「なっ………」


 狐白が驚いて声を上げるが、俺は声すらも上げれなかった。


 いや……同棲!?別に、俺はめちゃくちゃ嬉しいし、なんなら俺がキツネよりもオオカミになっちゃう可能性大なんですけど………。


「いやかい?」


「嫌っ……じゃないけど……嬉しいけど……」


 と、手をモジモジさせ、顔を更に赤くする狐白。さっきから狐白顔を赤くしてばっかだな。まぁほぼ俺とお義父さんのせいだけど。


「で、でも……透くんの事情とか……」


「透くんは一人暮らしだよ?」


「えっ……」


 なんでそれ知ってるんですか?という視線を送ったら、ウインクしてきた。


 なるほど、分からん。


「そうだ!折角ならそのまま狐白も透くんと同じ高校に通わせよう!」


「え!?無理だよ!私、受験受けてないよ!」


「心配しないでいいさ。そこら辺はほら………僕、神様だから」


「「……………………」」


 何も言えなかった。


「それじゃあ、僕は色々と準備をしてくるよ。それじゃあね透くん。狐白を頼むよ」


「え!?あ、はい!お任せ下さい!お義父さん!」


 と言うと、お義父さんの頭上からまたもや光が差し込み、エレベーターのように上へ上がって行った。


「……と、透くん……」


 キュッ、と弱々しく袖を握る狐白。


「えと…その、不束者ですが、よろしくお願いします………」


 言葉を紡ぐ度に弱くなっていく声量と、赤くなる顔。


 それを見て俺はーーーーーー


「………ぐふっ」


 吐血した。大丈夫、傷は深い

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