第4話

「良かった……10年間、ずっと待ってたよ」


 彼女の瞳から、涙がポツリと流れ落ちた。


「……うん、俺も…10年間、ずっと君に会いたかった」


 一歩踏み出して、狐白に近寄ると、彼女が手を出してきたので、彼女の手を握る。とても懐かしい感じがした。


「この感じ、懐かしいね………」


 ファサァ


「………あ、あぁ……」


 ん?なんか出てきたぞ?


 狐白の後ろから、何やら……し、しっぽ?みたいなものが出てきたんだが……めっちゃフリフリしてる。


 狐白がなんか嬉しそうに喋っているが、後ろのしっぽのせいで、内容が全然入ってこないし、今度はなんか耳が出てきたのだが……可愛いな。


 しっぽが揺れて視線がゆーらゆら。


「……透くん?何見てるの?」


 名前を呼ばれたため、はっ!となって、狐白を見つめる。慌ててみたら、なんか少し涙目になってた。


「あ、や!ご、ごめん!」


 俺は慌てて謝った。


「な、なんかさ……狐白の後ろにしっぽが見えたのような気がして………」


「…………しっぽ?」


 はい。あとなんかついでに耳もあります。


 狐白は最初何を言っているのか分からない的な反応をしたが、ゆっくりと上半身を捻らせて、後ろを向くと、めちゃくちゃ狼狽し始めた。


「へっ!?あ、うそ!?わ、私!透くんに会えたことが嬉しすぎてつい擬態がっ!!」


 顔を赤くしながらなんか言った狐白。


「………擬態?」


「へ!?………あ……」


 しなん、となんか耳が落ち込んだ気がした。可愛いなそれ。


 とりあえず、触ってもいいかね?


 俺は、狐白の頭についてる耳をとりあえず触ることにした。


「ふあっ!?」


 おー……なんかめっちゃふさふさしてて触るのが気持ちいいのだが……。


「ふぁ…あっ、や、やめっ……んっ……」


 こ……これが噂のもふもふと言うやつなのか!?


「やっ……あっ……とお、る……くんっ……」


「あ」


 夢中になってもふもふしてたら、顔を真っ赤にして目に涙を浮かべてこちらを睨んでる狐白がいました。


 とりあえず、可愛かった。


「………そ、その……ごめんな?」


 耳に手を置いていたのを、そのまま両手で頭を撫でる。身長差もあり、なかなか頭を撫でやすかった。


「………バカっ」


「ぬぐっ……」


 赤くなった顔をプイッ!と逸らされるのは、可愛かったけど、ちょっと心にグサッときた。


 ごめんね?本当にごめんね?まさか本当に本物とは思わなかったよ………。


 その後、素晴らしい速さで俺の腕を抱きしめにきた狐白は、そのまま俺を境内にある階段のところで座らせると、俺の目の前に立った。


「……元々、ね。透くんには今日伝えようと思っていたからいいけど………私、見てのとおり、狐なんだ」


 ポン!となんかよくあるアニメとかで変身する時に出てくる煙みたいなものが現れ、狐白の姿を覆い、それが晴れるとーーーーー


「………かわ」


 そこには、巫女服をきた狐白がいた。


 きつね色の髪に、狐白色の瞳、全体的にバランスのいいプロポーション、そして巫女服。


 なるほど、桃源郷エデンはここにあったか。


 とりあえず、なんか天使のお迎えが来たような気がするんですが、気のせいですか?


「と、透くん!?なんで息してないの!?」


 ごめん、どうやら気の所為じゃなくて、俺が息するのも忘れて見てたせいだわ。


「ごめん。狐白が可愛すぎて息してなかったわ」


「みゃっ!?ちょ、ちょっと!透くん!そういうのダメだから……」


「もう狐白好き。大好きだ。10年前からずっと好き」


「わ、私も好き……だけど!ちょっと待って……恥ずかしいから待って!透くーーー」


「あっ……」


 なんか勢いに乗って告白したけどそれはまぁいいや。それよりも問題があってさ、恥ずかしくなって可愛く慌てる狐白がさ、俺の口を手で塞ごうとこっちに来てたんですよ。


 昔からよく転びがちな狐白さん。そりゃ勿論10年も経ったし?もう治ってるかなーとか思ったりもしたんだけどさ………やっぱそこは変わってねー!!


 自分の足に躓いて、こちらに倒れるように来る狐白。もちろん、急な事態に反応なんてできる神経をお持ちでないので避けれない(反応できても避けるなんてマネはしない)。


「キャッ!?」


「いってーーーー」


 俺は、階段のところで背中をうち、痛いという事は出来なかった。なぜならーーー


「……………………」


「…………………」


 俺の口が、狐白の口で塞がれていたから。


 いわゆる事故チューと言うやつですね。記念すべきファーストキッスは痛みで分からなかった。


 ぱちぱち、と二回ほど瞬きをする狐白。あ、そんな狐白も可愛いよ……。


「あっ!ご、ごめんね!!わ、私、透くんとキーーーーーんむ」


 バッ!と慌てて退く狐白の腕を掴み、そのまままたこちらに寄せてから、狐白の腰に腕を回して、キスをした。


「…………好きだよ、狐白」


「……………っ!!!」


 目の前で囁くと、狐白の顔が真っ赤に染まってからーーーー


「………わ、私……も、す、好き……」


 そして、俺たちは3度目のキスを交わした。

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