第6話 初めてのお邪魔します

「あらあら、エレベーター閉まっちゃったじゃない?どうしたの和樹くん?」

何もなかったかのようにエレベーターの扉を開ける雪森さん。

俺はただ、唖然としていた。


「え、あ、あの、今なんて言いました?」

雪森さんと俺がエレベーターから出て、ゴミ出しの場所へ向かいながら俺は自分が聞き間違えたと思い、再度、確認した。


「ん?だから、お姉さんが今晩、和樹くんの家へお邪魔して、晩ご飯作ってあげるって、言ったのよ」

雪森さんは首を傾げながらそう答えた。


俺はドキドキしながら、顔を逸らしながら言った。


「い、いや、嬉しいですけど、申し訳ないですよ…」

本当は作って欲しいけど…

横目で見ると、雪森さんはいたずらっぽい顔をしながら、俺の顔を覗き込んだ。


「あれ?もしかして、照れちゃった?顔、赤いよ?」

俺はもっともっと、顔が赤くなるのを感じた。

すると、雪森さんはいつも通りのお姉さんっぽい顔に戻り、どこか安心するような声で続けた。


「遠慮しなくってもいいんだよ?お姉さんが美味しいご飯、食べさせてあげる」

そんな風に言われてしまったら、男としては「嫌です」とは言えない。



あれから、8時間、午後6時ちょっと前だ。あの後、結局、雪森さんには今晩来てもらう事になった。仕事をさっさと終わらし、俺はずっとソワソワしていた。俺は綺麗好きだから、部屋が汚い、と言った心配はない。オタクグッズも別に見られてもあんまり気にしないタイプだ、引かれても問題ない、そんなもん学校で慣れた。

だが…

美人の雪森さんがうちに来るってだけで緊張して落ち着かない。そうしてると…


ピンポーン、とインターホンが鳴った。

あれ、まだ雪森さんが来るって言った時間ではない。彼女は6時過ぎに来ると言っていたはず。俺はダッシュで玄関に向かい、深呼吸をし、扉を開けた。


「こんばんは、和樹くん!仕事早く終わっちゃったから早めに来ちゃった♡」

相変わらず、綺麗で可愛い雪森さんがいた。今朝と同じ服装で同じ、ポニーテールだったが、何度見ても、つい、見惚れてしまう。彼女の手にはスーパーの袋があった、きっと料理の為の材料だろう。


「い、いえ、どうぞ、上がって下さい」

そう言って、俺は雪森さんを招き入れた。


「はーい、お邪魔します」

雪森さんは言いながら、俺の家に入った。どく、どく、と心臓の音がうるさくって、雪森さんの美しい声がよく聞こえない、と思っていたら、


「このポスターって劇場版Fa○e、最終章のやつ?」

そう言いながら、雪森さんが玄関の前に飾ってあった、アニメ映画のポスターを見ていた。

俺は思わず、心臓鼓動を忘れ、


「そうなんです!このヒロインと主人公が手を取って、扉を開ける、キービジュアルが凄い好きで映画観た後に買いました!あっ、」

我に帰り、恥ずかしくった。これじゃあただのオタクだ。(オタクです)


「す、すみません、勝手に一人で盛り上がってしまって、、」

俺は嫌われた、と思いながらそう謝った。


「あー、まただ」

雪森さんのその言葉の意味が分からず、思わず、「え?」って言うと、


「さっきの和樹くん、普通に話してくれたのになぁって思ってね。君はいつも、あ、とか、い、いや、とかで絶対に最初、突っかかるもん。さっきみたいに普通に話してくれたら、お姉さん、とっても嬉しいな。」


「い、いや、今のは、、」


「ほら、また。めっだぞ?」

と優しく叱ってくれる雪森さん。


「分かりました、すみません、、」


「うん、いい子。それと、私もアニメとか結構好きだよ?というか、オタクだし」

雪森さんがその事を言って、俺はさっきのテンションを取り戻し、


「本当ですか?じゃ、あっちにいっぱい漫画やラノベあるのでぜひ、見てみてください!雪森さんの好きな作品あるかもしれないので!」

と、リビングの方へ向かう、俺。


「本当に?見たい見たい!ご飯の用意にはまだ早いし、それまで一緒にかたろう!」

と雪森さんもテンションが上がっていた。

俺がリビングのドアを開けて、中へと案内しようとしたら、











「でも、お姉さんが一番好きなの君なんだけどね」









「え?なんか言いました?」

何かボソッと聞こえた気がしたので、雪森さんに質問した。



「んん、なんでもな〜い♡

さあ、早く、見せて見せて!」


「はい、こっちに本棚部屋があってですね」








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