18
「ふぁ」
眩しい日差しを浴びながら廊下を歩き始めると、欠伸がひとつ漏れ出た。眠い授業が続いたから、5時間目が始まるまで休む場所を探していた。講演会は、実際に演奏も見せてくれるらしいから、絶対に見逃せない。騒がしい教室じゃ寝れないし、空き教室を無断で使うと生活指導のメガネ女に目をつけられるので、迂闊に手は出せない。行き着く先といえば、屋上ぐらいしかない。
幸い、この学校の屋上は立ち入り禁止令は出されてないので、簡単に立ち入れる。ただ、使われる事を想定していないため、鉄柵も無く雑にロープが張られているだけで安全対策はガバガバ。死傷者が出てないのをいい事に、教師も放置してる。なんで入口を作ってしまったのかは、学園七不思議のひとつらしい。危険だし、暇つぶしのチキンレースぐらいしか用途はない。
「あれ?」
屋上への階段を上がると、扉が少し開いてた。先客がいたのか、と思って引き返そうとしたその時、扉の奥から幽かな細い声が聴こえた。耳を澄ますと、その声は歌っているのだとわかる。声は遠いけど、凄く上手い。人を和ませる周波でも出ているみたいで、体の芯に響く暖かい感じがする。
あれ、でもなんか。
その声が奏でる歌は、何よりも聞き覚えがあった。アカペラでもわかるくらい、聴き込んで歌い込んで演奏した。
「どうぞ、捨ておいて」
その言葉に、確信した。この曲は私の、私たちの曲。
インディーズの下っ端バンドの曲をなぜ。
反射的に好奇心が勝つ。
弾かれるように、私は扉を開けて光の中に飛び込んだ。
そこにいたのは、
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