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今日も今日とて、最悪のお目覚めで登校。

不機嫌そうに窓際席に佇む私に話しかける人はいない。唯一の友達あわこといっちんは高校が別れてしまったし、コミュニケーション能力はカビが生えて使用不可。高校に入学してから早3ヶ月近く、ぼっち生活も板に付いてきた。近さと学力で決めたけど、後悔はない、はず。

「はい、皆席ついて」

チャイムの寸先で担任が入ってきた。年配のいつでも便所サンダルをパタパタいわせてる白髪のおじいちゃん。気の良くて、愛されキャラだけど別に私はそんなに話さない。

「じゃあ、5、6時間目のプリント配るよ」

先生の合図と一緒に回されてきたプリントの内容は、職業インタビューについてだった。よくある学校行事の一つで、丁度いいラインの職種を引っ張り出して、夢見る学生に講演するという地味なイベント。

今回来る人は、『縦水 湊』というらしい。職種は、コントラバス奏者。男性か女性か微妙に分からない名前だし、写真がないのでコントラバスのイメージが湧かない。大きいことしか知らない。チェロのバス版みたいな感じかな。ギターとベース的な。

「ホームルームはここまでです。なんか連絡ある人います?」

先生の言葉に、クラスのギャルが間延びした声で「ないでーす」と返事する。

一気にガヤつき始めた教室で、私1人プリントに目が釘付けだった。全然知らない名前に、興味だって無かったコントラバス。なのに、なんかめちゃくちゃ気になるなこの人。

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