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ライブハウスに入ると、前のバンドが照明の調節をしているところだった。店は、全体的に黒が基調とされていて、奥行きにつれて狭くなる作りをしていた。入口すぐ横のドリンクスタンドで、スレンダーな美人がペットボトルのオレンジジュースを呷っていた。佇まいは、バーにいる大人の女性のようで様になっているのに、飲んでいるのはお馴染みのキャラが描かれたペットボトルジュースというのがミスマッチで、なんとも間抜けに見えた。

美人、もとい"いっちん"がこちらに気づいて手を振る。綺麗な卵型の顔で、意地悪っぽく笑っている。

「なにニヤついてんだよ、日生」

言われて気が付いた。いっちんの滑稽さにつられて、無意識に口元が綻んでいた。けれど、いっちんが可笑しくてなんて口が裂けても言えないので、適当に誤魔化す。

「"りちぇは"さん、次お願いしまーす」

タイミングよく順番が来て、スタッフに呼ばれた。いっちんの手を引いて、無理くり話を切り上げた。

それぞれが楽器とバチを持って、舞台に上がっていった。あわこから、赤い塗装のエレキギターを受け取る。ポケットから、イギリス国旗の色合いをしたまだら模様のピックを出した。

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