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空が顔色を悪くし始めたので、昼前に洗濯物を取り込んで家を出た。休日の朝の日課(という程ではないけどたまにやる)川辺のアコギ演奏会をしたからか、妙に自分がオシャレ人間に思えて気分が良かった。

今日は、夜6時からうちのバンドがちょっとしたイベントに参加する。私の所属するバンド『りちぇっとはうす』は、中2の時に友達に誘われて立ち上げた3人組ガールズバンド。私はギター兼ボーカル担当をさせてもらっている。

イベントというのは、新設のライブハウスのオープンイベントで、私たちは2、3曲披露する予定。今からそのリハなのだ。

「あ、ニッキー!!!」

聞きなれた声が近くで聞こえた。ぐるぐる首を回すと、黒いオシャレな外観をしたビルの前で、愛嬌とふくよかさのある女の子が手を振ってる。

「あわこー!」

私も手を振り返しながら駆け寄る。

あわこ、またの名を粟野もも胡。彼女は、バンドの発起人でありドラム担当。お嬢様気質で、ほわほわと柔和な雰囲気を纏っているけれど、その実中身はかなりロックな行動派。時に強引な所があり、今回のライブ参戦もあわこにより、急遽ゴリ押しで決まったのだ。

「場所分かりにくくなかった?」

檜皮色のボブが揺れて、あわこが抱きついてくる。

「大丈夫だったよ」

「そっか、ならよかった。いっちん待ってるよ、行こっか」

にこにこ笑顔で、あわこが地下への階段を先行する。その背中を私も追っていく。

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