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川沿いをフラフラ歩いていくと、川に降りるための石段が現れる。そこに腰を下ろして、持ってきたアコギを静かに構えた。
何を弾こうかな。指先で弦をなぞる。知っている曲は多いけれど、弾ける曲は少ない。何年もやっているけど、未だにFのコードが苦手。特に上手くはないけれど、ただ早朝にこうゆう場所で演奏するのは、所謂エモさを感じて好きだ。
何の気なしに、そこにあった弦を爪弾く。
それは、とある曲の印象的な音。
記憶を辿って、その曲を少しずつ形作っていく。英詞で、歌えはしないけど昔から曲調が好きだった。軽快な、いかにもロックンロールって感じが好き。誰もが知ってるあのイギリスのロックバンドも歌ってた。歌詞の意味が、「彼女を見つけ出す」ってのをひたすら繰り返してるらしい。
「私も、見つけて欲しいや」
かわいた笑いと一緒に言葉がこぼれた。
誤魔化すように、曲をひとつなぎにかき鳴らす。下手だな、でも楽しい。
「上手ね」
後ろから声がして、反射的に振り返った。
けれどそこには誰もいない。不気味さと誰かに聴かれているかも、という小っ恥ずかしさがじわじわと広がっていく。腕時計は6時にじわじわと近づいていく。
雑にアコギを懐に抱えて、足早にその場を去った。
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