第5話
雫と並んで浜辺に座る。
「洋二くん」
「どうした?」
「洋二くんは、どうして死のうと思ったの?」
「今のご時世、いつ命を奪われるかわからないからな・・・」
「うん」
「だから、ささやかな抵抗として、奪われる前に絶とうと思った」
「そっか・・・」
正直、俺なりの強がりだ。
そんなに、かっこいい?ものではない。
「私と同じだね」
「同じ?」
「うん・・・私・・・」
雫の声は、波にかき消された。
でも、雫の辛さは、俺なんか比べ物にならなかった。
もしかしたら、俺は・・・
いや・・・
いいだろう。
苦労、不幸、その感じ方は違う。
ただ・・・
「洋二くんは、今死んだとき、『俺は幸せだった』と言える?」
「100%ではないが、今ならまだ言える」
「私も・・・なら、そのままで、帰ろうか」
「どこへ?」
雫は、海を指さす。
「私たちの生まれ故郷へ」
「ああ。行こうか」
俺と雫は、恋人つなぎをしながら、海へと入っていく。
「海へ入るんじゃないよ。母のもとに帰るの」
「・・・そうだな・・・」
今、俺たちは母のもとへと帰っていく。
後悔はない。
「明日、新聞に出るかな?」
「向こうで見てみよう」
俺たちは、こうして帰っていった。
あらゆる生命の母である、海の中へ・・・
帰るべき場所 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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