第4話
「雫ちゃん、またな」
「うん。おじさんまたね」
雫は、悲しそうに焼肉店を見る。
(ありがとう。おじさん。元気でね)
蚊のなくような声だったが、聞き取れた。
「洋二くん、次はカラオケ行こう」
「カラオケか・・・久しぶりだな」
「うん。洋二くんの歌、聞きたい」
「じゃあ、行こうか」
こうして、カラオケ店に行った。
周りは怪訝な表情をしていたが、気にならない。
店員に案内された部屋に入ると、雫はマイクを握って離さなかった。
歌う曲は、全部知らない。
でも、とても上手い。
雫はもしかしたら、俺をからかっているのか・・・弄んでいるのか・・・
でも、それでもよかった。
最後にこうして、ときめく事が出来た。
あれ?
焼肉屋は、代金払ったか?
記憶にない。
俺の不安な顔に気が付いたのか、雫が声をかけてくる。
「あっ、洋二くん、ごめんね。次は、洋二くんのワンマンライブだよ」
「ワンマン?」
「何を歌ってもいいよ。邦楽なら」
「了解」
俺は、マイクを握り、力の限り熱唱した。
観客はひとり。
でも、心地良い拍手をくれた。
雫が、どういう環境なのか・・・
どうでも、良かった。
その後は、ウィンドウショッピングを楽しみ、あの海へと戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます