第3話

「じゃあ、どこへ行く?」

俺は雫に尋ねる。


「それは、男の人が決めるものだよ」

「文句言わない?」

「うん。言わない」


女の子は、皆、そういう。

『好きな男の子となら、どこでもいい』と・・・


でも、その場所が自分の気に食わない場所だと、文句を言う。

つまり、自分の行きたい場所を、エスパーのように悟ってほしいらしい。


疲れる・・・


「でも、その前に・・・」

「何?洋二くん」

「着替えた方がいいだろう。スーツ姿と女子高生の制服ではまずい」

「私は、別にいいよ」

「俺が良くない」

「私は、このままがいいから、洋二くんもそのままで・・・」


まっ、いいか・・・


俺たちは、街へと繰り出すことにした。


「さてと、とりあえず腹ごしらえだ」

「洋二くん、私食べたいものがある」

「何だ?高すぎなきゃいいぞ」

いや、別に高くてもいいんだが・・・


「焼肉!」

笑顔で答える。


「いいけど、開いてるかな」

「うん。この近くに美味しい焼肉屋があるんだよ」


雫に連れられて、焼肉屋に入る。


「雫ちゃん、久しぶり」

「おじさん、久しぶり。相変わらず景気がいいね」

「まあな。そちらの方は?」

お店の主は、俺を見る。


「この方は、進路指導の先生。相談に乗ってもらってるの」

「学校はいいのかい?」

「今日は、テスト休み」


全部嘘なんだが、まあいいだろう。


そうして、席に着いた。


「先生」

雫は、ウィンクしながら言う。

あっ、拙いか・・・


「どうした?」

あっ、こいつの苗字なんだっけ?」


雫は、制服のブレザーの襟をめくる。

雨宮と書いてある。


あっ、そうか・・・


「先生は、ポニーテールとツインテールとロングヘアーとショートヘアーでは、どの髪型が好きですか?」

「ポニー」

「わかりました」


雫は、席を立ち化粧室に行く。

その間に、注文した肉が運ばれてくる。


雫は、髪をポニーにして、戻ってきた。


「先生だから、特別ですよ。さあ、食べましょう」

「野菜がないな・・・」

「私、逆ベジタリアンですから」


こうして、進路相談(疑似)をしながら、焼肉を食べた。


真面目な話をしながらだと、不味くなると思うが、そんな事はなかった。


2時間ほどして、店を出た。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る