03

 そして、ドラマを観賞するまえに。夬は死んだ。


 病室。


 彼は、いなかった。


 どうせ、ドラマを見ても。表情の変化を理解できないから、つまらなかっただろう。見なくてよかったのかもしれない。ドラマのデータUSBだけを、病室のテレビに挿しておいた。


 夬は、どこかへ散歩に行っているらしい。自分も、なんとなく病室を出た。


 中庭を歩いていたら、ばったりと出会う。

 夬。

 なんと声をかけようか、束の間、迷う。彼は、もう、彼ではない。


「どうも。はじめまして。いい天気ですね」


「そうですね」


 そう、言葉をかけて。

 離れる。

 夬は、死んだ。

 それだけが、事実として、心を刺した。

 夬にだけ見せていた、本当の自分も。いま。死んだ。

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