第45話 他店との激似

「Спасибо за ваш」

勇が数点質問しようとした矢先、例の女性店員がそう言い残して帰ってしまった。勤務時間が終わったのだろう。

<え~、せっかく色々聞こうとしたのに。仕方ない、爺さんに聞いてみるか。しかしこの爺さんといい、店のつくりといい、見覚えがあるんだよなぁ。どこだったっけなぁ>

勇は気を取り直して初老のマスターに質問した。

「店名からして、この店はロマノフ王朝に関係しているのか?」

「 Ты прав」

「では、あなたもロマノフ王朝の人間なのか?」

「Это не так」

「では、どういう関係?」

「Я работаю」

「雇い主はロマノフ王朝の人か?」

「Ты прав」

<ふむふむ、やっぱりこの辺にロマノフ王朝に関係した人がいるんだな。よし分かった!この辺を徹底的に調べ上げてリサにたどり着いてやる!>

俄然、勇のテンションはダダ上げになった。

「さっきの女性店員はどうなんだ?」

勇がその質問をするや否や、突然マスターの顔色が変わった。と思ったら、4、5人の警備員が店内に入り込んできて束になって勇を吊るしあげた。

「何するんだ、お前ら。って、かどっから来てんだよ、寄ってたかって!俺が何したっていうんだ!」

ここには「エカテリーナ宮殿」というロマノフ王朝の人間が夏の間に過ごしたとされている宮殿で、現在は観光名所になっている。勇はそこの警備員数人に取り押さえられた様だ。

勇を連行した警備員らは、喫茶店から「エカテリーナ宮殿」の正門に向かっているようだった。辺りはもうかなり日が陰っている。

<おれもこれまでか。まぁよくやったほうだな。悔いは無い>

勇の脳裏にはリサのシルエットが浮かんでいた。

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