第33章 お嬢様の生存確認
リサがロシアへと連れ去られて直ぐの月曜日、勇は18:30きっかりに
「Club Passage of Life」を訪れた。店に入るなり
「ママは居るか?」
「あら、どうしたの?血相変えちゃって。しかも今日は木曜日じゃないわよ」
勇のお気に入りだったキャストの「りん」が対応する。
「そんなの分かってる。ママは?」
「まだよ。ママに何か用事なの?」
「何かの用事、くらいの騒ぎじゃない」
「じゃぁ何の騒ぎかしら?」
「お前には分からん事だ」
「あらそう。残念ね」
「おい、そう言えばリサを俺に紹介したのはりんだったよな?」
「そうよ。それがどうかしたの?」
「どうかした?じゃないだろ。リサから連絡とかあったか?」
「ないわよ。だけど貴方、木曜の夜にリサちゃんと一緒に外に出たじゃないの」
「そうだが」
「だったら分かるでしょ?違うの?」
「分からんから此処に来てるんだろ!」
勇の声のトーンが一段上がった
「悪い。大声出して」
「まぁいいわ。けど、わたしはリサちゃんを貴方に紹介しただけだから細かい事は知らないわ。だからやっぱりママに聞かないとダメね」
「そうなるか」
「頭を冷やすために飲みましょ。折角だから」
「そんな気にならんな」
「あら、リサちゃんの事で頭の中がいっぱいって訳ね」
「うるさいよ」
「今日はわたしで我慢しなさいよ。はい」
りんはアイスの入ったグラスを勇に勧めると、ウイスキーを注ぎ出した。
「初月曜出勤、おめでとう!今日のはいいウイスキーよ。わたしからのプレゼント」
「なんだ、初月曜出勤って。よく分からんな。最近多いな、訳わからん事」
「そうなの?いいじゃない。この世の中には分からないことなんて山ほどあるもの」
「まぁ、そうだがな」
勇はウイスキーのロックを一口含んだ。
「お、確かに味が違うような。味音痴の俺でもわかるぞ」
「でしょ?それはねぇ」
「なんだ?」
「わかんな~い」
「はぁ?」
「そのウイスキーはね、ママが大事にしてて別の所にあるやつなの。でも銘柄はわかんな~い」
「げっ!なに?それは勝手に飲んじゃダメなやつだろ?」
「わかんな~い」
「おまえなぁ。頼むよ」
時計の短針は7を少し過ぎたところを指していた。
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