第34章 ママとお嬢様との出会い
<カランコロン>
エントランスの入客を知らせる鈴が鳴ると、勇は思わず振り返る。
「おお、ママ。待ってたよ」
ママはきょとんとして、
「あら、いらっしゃい。今日は木曜日じゃないわよ」
「同じことをさっき言われたよ」
頭をぽりぽり掻きながら勇は言った。
「私になんか用なの?」
「うん。リサの事について」
「あら、リサちゃんどうかしたの?」
「連れていかれたんだ」
「ん?よく分からないわ。連れていかれたの?誰に?」
「よくわからん。黒服どもとしか言えない」
「黒服?」
勇はママにリサとの行動と連行の経緯と名家のお嬢様である事を詳しく話した。
「ふーん。そんな事があったのね。大変ね」
「そもそもママはリサと空港で出会ったんだよな?」
「そうよ。リサが日本に来たは良いものの、暫く居たいんだけど住まいや仕事が無いって話を聞いてこのお店で働いて住み込めばいいってスカウトしたの」
「ふむ」
「あんな美人さんでしょ?間違いなく固定客が掴めると思って猛プッシュしたわ」
「それで此処に来たのか」
「ええ。貴方は今後どうするつもり?リサちゃんに惚れてるんでしょ?」
「ま、まあな。だけど、日本に来て強硬的に帰国させられる程の名家のお嬢様だぜ?そんな家系のお嬢様では俺じゃ釣り合わんだろ。俺なんかいいおじさんだぜ?」
「そんなのどうでもいいんじゃない?自分の気持ちに素直に従えばいいんじゃない?後悔すると思うわよ。行動しないと」
「そうなんだがな。今は二の足を踏んでるよ」
「大丈夫よ。私たちがついてるわ」
「いや、付いてても。なぁ」
「どうせダメ元でしょ?駄目でも特に何も変わらないわ」
「それもそうだな」
勇の脳裏にはサンクトペテルブルクに居るリサの元へと行く決断を下す事に傾いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます