第29章 名家のお嬢様とデートの相談

単なる「目玉焼き」なるロシア風の昼食を終えたふたりは取り敢えず「水族館」へ行くことに決めたが、東京にもいくつか水族館が存在する。しかし、勇はそういう方面はてんで無頓着であり殆ど知識がない。もちろんリサは知る由もない。

「水族館なんて行ってないな。あるのはわかるが、どこにどんなやつがあるなんて全く知らない。Gookleさんで検索してみるか」

徐にPCの電源を入れて東京の水族館を検索し始めた。結果は10か所以上がヒットした。

「へぇ、東京にも沢山水族館があるもんだな」

「そうね。わたしは特にどこという希望はないわ。わからないもの」

「ほう、しながわ水族館ってまだあるんだな。ここは行った事があるぞ」

「誰と行ったんですか?」

「後で話すよ」

「いま知りたいです」

「昔の彼女とね」

「その彼女はどうしているんですか?」

「わからない。もう何十年も前の話だ」

「その人はかわいい感じでしたか?」

「おいおい、食い下がるな」

「気になります」

「それは人によるんじゃないか?」

「わたしとその彼女はどっちがかわいいですか?」

「うーん、それも人による」

「もう!」

リサは勇の昔の彼女よりかわいいと言わせたかっただけのようだ。

「そこでいいだろ?あとの水族館はよくわからんから」

「仕方がないですね」

リサの返答に力がない。しょぼくれている。

早速出掛ける準備をする二人。リサは先程のやり取りが気に食わないのか、無言で支度し始めた。

「よし、行こう」

返答がない。

「おい、そんなにしょぼくれる事はないだろ?昔の話だぜ。そんなにひきずるなよ」

「だって、いさみはわたしのことかわいいと思ってないでしょ?」

「ばかだな、そんな事あるわけないだろ?」

「じゃぁ、なんでかわいいって言ってくれないんですか?」

「昼間っからそんな事言えんよ。この歳になって」

「え、じゃぁ何時言ってくれるんですか?」

「そのうちな」

「そのうちはいつですか?」

「子供の押し問答だな。わかったよ。今日ここに帰って来るまでに言うよ」

「わかりました」

一気にリサの機嫌が良くなった。

「行きましょう!」

「おいおい、急に引っ張るなよ」

リサは勇の手を掴んで勢いよく玄関のドアを開けた。

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