第28章 朝から名家のお嬢様と?
気づくと朝になっていた。木漏れ日が紺色のカーテンの隙間から優しく差し込んでいる。リサはすやすやと勇のベッドで寝ているため、リサに如何わしい事をすると起こり得る<何かしらの報復>を恐れている勇はソファで毛布を掛けて寂しく眠った。だが、さっきまで一生に一度の選択を迫られていたためろくに寝ていない。
「あれ?今日は何曜日だ?あのクラブに行ったから金曜か?何?金曜?やばい!寝坊だ!」
がばっと起きだし、慌てて身支度をしだした勇。だが、今日はラッキーなことに祝日であった。という事は3連休になる。
「ああ、そうだった。今日は日ロ国交記念の日だったな」
ぶつぶつ言った後、再び毛布を掛けて横になった。かたやリサは気持ちよさそうに眠り続けている。
二度寝した勇はなかなか起きない。時計は正午前になっていた。ふとキッチンを見やるとリサが立っていた。
「おはよう、いさみ。キッチン借りたよ」
「ああ、かまわない」
朝食を食べ損ねたふたりは、それを兼ねた昼食になった。
「何を作っているんだ?」
「おでんじゃないよ」
「そりゃそうだろ。どんだけおでん好きなんだよ」
リサはくすりと笑う。
「目玉焼き」
「いいね。寝すぎて腹も減らんし丁度いい」
「今日お休みでしょ?」
「そう、昼まで寝たからな」
「どこかに連れて行ってください」
「どういう所にだ?」
「うーん、楽しい所か日本の歴史が見れる場所がいいです」
「楽しいところって遊園地とかか?」
「いさみがわたしと行きたい場所です」
「それはもっと困るな。 この歳になると、そういうアトラクション的なものの興味が殆ど無い」
「いいわ。いさみが行きたいところでいいです」
「そうだな。サンクトペテルブルクは内陸だろ?水族館はどうだ?」
「それがいいわ!」
「だが、外に出るとまた黒服のやつらが来るとも限らんし、ママにもまだ連絡していない」
「舟に乗ってるんでしょ?なら大丈夫だわ」
「本当に意味が分かってるのか?まぁいい。しょうがない」
「ワオ」
勇のほっぺたにキスをした。
「朝っぱらかかよ。もう昼か。キスは挨拶だからセーフか」
勇は頭をぽりぽり掻いた。
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