第20話 西新宿を駆ける

「おい、黒服のあいつら誰だよ?」

「私も知りません。が、味方ではないようです」

「そりゃそうだな。タクシーの運転手もグルみたいだったし。大変なこった。お前さんはどんだけヤバい娘さんなのかね」

二人は息を切らして新宿御苑近辺から新宿駅方面に駆けている。

追手の黒服との距離はあるものの、肉眼で確認できる距離ではある。およそ300mくらい後方か。

「この辺に知り合いが経営している喫茶店があります。そこなら追手はわかりません」

「そうか。じゃぁ、取り敢えずそこに匿ってもらおう」

二人は新宿2丁目にたどり着いた。巷で有名なSGBTの方々関連のお店が多い。二人は甲州街道から靖国通り方向に入った。割と広めの路地が続く。

右手に公園が見えて来た。新宿公園であろうか。その手前を左に曲がり細目の路地に入ってすぐの雑居ビルに入った。しかし、看板らしきものはどこにも見当たらない。正面にエレベーターがある。ドアがスライドするとリサは「3」のボタンを押した。エレベーターが上昇する。

上昇が終わると、ドアがスライドして開いた。と同時に小さな看板が足元にある。

<喫茶 ニコライ>とある。

「ここか?」

「そうです」

リサは戸を引くと、カランコロンと鈴が鳴いた。

「いらっしゃい」

店主らしき初老人が低い声でカウンター越しに座って応答する。

「おじさま、お久しぶりです」

「おお、姫さま。お久しぶりで」

「なにぃ?姫さまだと?やっぱりロマノフ王朝の繋がりか?」

勇は驚きを隠せなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る