第14話 密談(1)

 「IAO」なるデリヘル「国際援助機構」から派遣された「レディ・カカ様」が「1201」号室で待ち構えていた。カカ様はルームサービスのフルーツ盛り合わせをつまんでいた。

「あら、遅かったじゃないの。指定した60分もう過ぎるわよ?」

「いや、悪いね。あっという間だな、1時間なんて」

「そうよ。私と過ごせばもっと早いわよ」

「それは残念だ。次回にしておくよ。それより服、ありがとう。すごく助かった。礼を言うよ」

「お礼はいいわ。その代わり今度本指名、でね」

「あ、ああ。わかった」

 勇は60分の料金をカカ様に手渡した。暫くしてリサはウニクロで着替えたカカ様の青いワンピースの入った紙バッグを手渡した。

「ありがとうございました」

「礼はいいわ。今度はあなたのダーリンをお借りするから」

「え、ええ」

 リサは「IAO」のシステムを未だに理解できていないようだ。

カカ様は「IAO」本部に連絡しミッションが終了したことを告げた。数分後、カカ様に迎えの電話があった。

「じゃぁね。グッナーイ」

「ありがとう」

 二人は会釈してカカ様がエスカレーターに吸い込まれるのを見届けた。

「いやぁ、なかなかのキャラだったな。流石は世界の歌姫、ってところだな」

「彼女の仕事は一体何なのですか?さっぱりわかりません」

「うーん、まぁ人類を幸せにするサービス業ってところかな?なんせ世界の歌姫だから。まぁ、詳しくわからなくても問題はない」

「うーん」

 リサにはまだ腑に落ちないようだ。

「取り敢えず服の問題は解決した。お次は何かな?あ、そうだ。肝心な事を忘れていた」

「何ですか?」

「歩いている時にも聞いたが、外務省のしがない一職員の俺の定期ごときでお前さんが必死に追いかけてきたのか、その本当の理由があるんじゃないのか?」

 リサは急に俯き黙り込んだ。

「やっぱり何かしらの特別な事情があるようだな。そうか。しらふで聞くのも何だから、どこかへ食事でも行こう。俺は腹ペコだ」

 リサはいまだに俯いている。

「そんなんじゃ、雨の中追いかけて来た甲斐もないだろ?いいから、何か食いに行こう」

 勇はそう言うと、リサの腕を掴んで部屋の出入口に向かった。が、リサは立ち上がるまいとその場に居座ろうとした。

「今は外に出たくない」

「何でだ?」

「それは今言えません」

「なんだよ、それじゃ何にもわからんぜ?おまえさんが雨の中俺を追いかけて来たのには俺に何らかの助けが必要だから、そうだろ?」

 リサは沈黙を続ける。

「であれば、その助けは何なのかを俺が知らなければ何にも解決しないぜ?」

 <グ~>

リサは顔を赤らめておなかの辺りを両腕で隠した。

「体は正直だな。腹も減るだろう。だから意地張らないで飯を食いに行こう。外に出ても問題ない様にするから」

リサはこくりと頷くと勇に手を引かれ部屋を後にした。

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