第11話 虎ノ門から六本木へ
「レディー・カカ」嬢から拝借した大きめの青いワンピースを着たリサと勇は、虎ノ門近辺で女性向けの洋服を物色する。幸い雨は小雨になり、通行人も傘を殆ど差していない。リサもホテルで暖を取ったおかげか震えも止まっている。しかしこの辺りはビジネス街である為、適当な店が見当たらない。二人は首都高沿いを歩いていた。
「しかし、俺の定期券如きをよく届けようと思ったな。何か特別な理由でもあるのか?」
リサは1,2秒沈黙した後で
「貴方が外務省の方だったからです」
勇は少し驚いた。しかし、何となくその理由を自分の中で推察していた。
「外務省の職員だと落し物をずぶ濡れになっても届けるのか?よく分からんな。もう 少し詳しく話してくれないか?」
「すみません、今は話せません」
リサは俯いて答える。
「まぁ、いろいろ事情があるだろうから追々で構わんが」
「すみません」
二人は適当な店を探しているとはいうものの、宛もなくただ歩いていると言ってよかった。勇はリサの事情を知りたいとどこかで思っていた。リサが口籠るので、ホテルに戻ってからでもいいかと落とし所を付けた。 しかし、肝心のリサの服の案件が解決しない。
「うーん、女性の大きめの服か。服はプレゼントでもあんまり買わないからなぁ。参ったな」
勇はスマホでそれらしき洋服屋を検索してみた。
「なーんだ」
「どうかしましたか?」
「いや、大して悩む必要も無かったなと思ってね」
「?」
リサは勇の言っていることがよく理解出来ていないようだった。
「六本木にウニクロがあるからそこで服を買えばいいだけの話だ」
「そういう事ですか。やっと分かりました」
リサはニコリとして答えた。二人は首都高沿いに六本木へと歩いて行った。
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