第10話 外務省職員が国際援助機構(IAO)なるところに連絡する(2)

IAO、国際援助機構なるデリヘルから派遣された嬢である「レディ・カカ」様が勇たちの部屋を訪れ玄関の呼び鈴を鳴らしている。勇はそろっとドアノブを手前に引いた。

「ご指名有難うございます。IAOのカカで~す」

予約の電話の通り背丈は170cm以上ある大柄の女性で、北欧系というより北米系の金髪だ。スタイルは確かに良いがお顔はというと、本物の「レディ・ガガ」には程遠くどちらかというと「ホイットニー・ヒューストン」系の豪快な顔立ちで青を基調としたざっくりしたワンピース姿である。やっぱりプロフィールと大違いだ。よくある話である。しかし、今回は「洋服」が目的でお顔はさして関係ない。とはいえ、大方の外人さんはノリが軽いと言う定石は変わらない様だ。

「ああ、どうも。入って」

「お邪魔しまーす」

そう言うと「カカ」様は勇の部屋に足を踏み入れた。暫く部屋を進んで行くとリサと鉢合わせた。

「あ~ら、わたしの他に先客がいらっしゃるのね。お客さん、隅に置けないわ」

「いや、これには事情があってだな」

「いいのよ、こういう事はたまにあるから」

「だから、そうでは無くてな」

勇が返答に困っているのを見かねたリサが代わって事情を説明する。

「実は、私が着る服をお借りする為にあなたを呼んだのです」

「カカ」様は全く合点がいって居ない。

「What's?よく分からないわ。どういうことなの?」

「私が雨に打たれて洋服がびしょ濡れになったので、代わりの洋服を買いに行くために私の体型に似た女性を呼んだ、それがあなたなのです」

「ん?という事は、わたしはどうなるの?」

「あなたはこの女性に服を貸して、我々がここに帰ってくるまで待機してもらう、って事になるな」

「Oh、じゃぁ私自体が目的ではなく着ている洋服が目当てなの?」

「そうなるね」

「Unbelievable!そんなの初めてだわ!」

「まぁそうだろうね。でも苦肉の策だから勘弁してくれ。料金とは別にチップを用意するから」

勇は財布から数枚の札を取り出して「カカ様」に手渡した。

「わかった。協力するわ」

すると「カカ様」は徐にその場で洋服を脱ぎだした。リサは思わず口を覆った。

「おいおい、いくら商売柄でも着替えは浴室とかでしてくれよ。こっちが困る」

「折角だからサービスと思って脱いだのに」

「気持ちだけ受け取っておくよ」


リサと「カカ様」は奥の浴室に向かっていった。リサはバスローブ、「カカ」様は青いワンピースで互いの着衣を交換した。「カカ様」が若干リサより大柄なのでワンピースは少しだぶだぶしている。が、今回は事態が事態なので少々の事は目をつぶらなくてはならない。

「着替えたわよ~」

と言う声と合わせて二人は浴室から出て来た。

「似合いますか?」

「ああ、まあ」

勇は何となく気恥ずかしい感じで答えた。

「じゃぁ、わたしはこのバスローブを着てフルーツでも摘まんで待ってるわね」

勇は玄関のドアノブを握りながら

「悪いね。恩にきるよ。時間は60分で組んであるから45分後くらいに戻るよ」

と「カカ様」に告げる。

「わかったわ。いってらっしゃ~い」

「カカ様」は手を振りながら言った。二人は早速部屋を後にした。

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