第7話 『聖女』と学園

 学生の毎日は目まぐるしく変化していく。それが貴族は尚更なのだろうと、卒業を間近にした今日この頃、強く思うようになった。

 ……いや、この忙しさは『貴族だから』ではなく、『聖女の付き人だから』なのかもしれない。

 あの卒業パーティーからもう少しで一年が経つ。今度は私達が卒業する番なのだが、やはり王族とその王妃の卒業ということもあり、とても豪奢になる──と、家の専属の使用人から告げられた。

 それはさておき、杏──『聖女』様はこの一年。これでもかと言うくらいに私と大半の時間を過ごしていた。それは今も。


『ベリスさんベリスさん。この刺繍ってどうですか?』

『可愛いわね。白にすれば制服でも問題なさそうだし』

『ですよね! それじゃあこれ、作ってみますね!』


 声が大きく、距離が近いため……煩いというより、正直邪魔である。こちらとら大学へ進学が決まっており、今は知識の復習と予習を兼ねての勉強中なのだ。しかし偶然にも杏に見つかった私は、勉強にほとんど手をつけることができていない状況。ホントどうしろってんだ。

 私は確かに付き人だが自由時間をくれ。授業中とかならまだしも、放課後くらいはゆっくりしたいのだ。まあそういう細かい部分は大雑把だから、実質休みはないんだけどな! ホント貴族社会は滅びたほうがいい。そして陛下の頭皮を焼き畑農業してやりたい。

 まあそれももう少しの辛抱だろう。私はそう楽観視していた。

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