第6話 説教

「──申し訳ない」

「はぁ……そう思っているなら少しは相談してください。そして表情に出さない……これも前々から言ってるわよね?」

「はい……」


 王城のとある一室。使用人達から『説教部屋』と呼ばれる小部屋で、私は婚約者である第二王子を正座させていた。

 卒業パーティーの最中に、婚約者を差し置いて、苦虫を噛み潰した様子で『聖女』様に挨拶したならず者なので、一切の容赦をする気はない。というか陛下から『阿呆が何かしたら叱ってくれ』と言われているから、心置きなく注意できるのだ。


「で? 今回は一目惚れですか?」

「違う! それはありえない!」


 婚約者はその眉目秀麗な顔を険しくして食い気味に叫ぶ。折角整えた金髪も台無しだ。

 お陰で真面目に言っていることとはわかるけど……まあ反省もしてるのでしょうし大目に見ましょう。


「では何故、婚約者のいる身で他の女性にドレスを買い与えたのです? 弱みでも握られましたか?」

「それは……言えない」

「それは弱みをネタに脅されてるからですか?」

「……うん」

「そう……じゃあ仕方ありませんね」

「え?」


 あっさり引き下がると、婚約者は呆気にとられた様子を見せる。

 ……彼、自分に非があると理解してると、本当に臆病になるというか『罪には罰を』と強く思っているというか……まあ彼のそこが美点なんでしょう。感情的になることも多いけど。


「さあ。もう夜更けよ。明日も学園なんだから、早く部屋に帰りなさい」

「あ、ああ……」


 彼は狐につままれたかの様子で部屋へと戻っていく。

 さて……本当に夜中なのよね。私も泊まりたいけど、帰ったほうがいいわよね?

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