第3話 『聖女』と邂逅

 翌日、私は親父の言い付け通り王城へとやってきた。

 ……この城ホントでかいな。いつ見ても思うけど壊れないかな。部屋数多いし無駄に広いし、ぶっちゃけそこらの屋敷と同じくらいでもよくね? まあその屋敷とてだだっ広いだけだから一番は民家なんだけど──


「よく来た。ベリス・ブラッドストーンよ」

「……お久しぶりです。陛下」


 最近は謁見の間なぞ使われることがない。必要最低限。あって神聖な儀式の時のみ。それ以外は今のように応接間にて対応される。まあ国王が出てくるとは思いもしなかったけど。

 陛下の横には、修道服をきた黒髪の美人女性がいる。彼女が『聖女』なのか、はたまた新たな、最近お気に入りの妾なのか……。


「そして、彼女が『豊穣の聖女』だ」

「……御初にお目にかかります『豊穣の聖女』様。ベリス・ブラッドストーンと申します」

「……」


 反応がない。陛下を見ても首を横に振り、やれやれといった様子。

 ……なるほど。だからこその私か。


『──言葉が、わかりますか?』

『!? (コクコク)』


 私が使言語を使うと、黒髪紫眼の『聖女』様は、驚いた様子で頷く。

 その様子を見ていた陛下は、ひとつ頷き「では頼んだ」と応接室を後にする。

 完璧に押し付けられた。あの白髪ジジイの髪の毛がサラサラと抜けること願おう。

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