第十章 リリース間近!みんなの憲法第九条
○舞の自宅・舞の部屋(夜)
睦、ドアを少し開けて中の様子を窺う。片手に冊子を持っている。
舞、机に頬杖をついてぼんやり考え事をしている。
睦、舞の目の前で手を振る。
驚く舞。
睦「ええもん、見つけてん」
睦、持ってきた冊子を舞に渡す。
冊子の表紙に『大阪大空襲 体験記』と記されている。
舞、冊子をパラパラめくる。
睦美「それお婆ちゃんが、戦争の話したくないからって、くれてん」
舞「何で話したくないんやろ?」
睦「お婆ちゃん、曾お祖母さんなくなった時ショックで一時的に声失ったらしいんよ」
驚く舞。
睦「戦争っていうのは、私らじゃ想像つかんほど過酷な経験やと思うねん。そういう辛いこと、どうやって質問していいか分からんわ。舞も辛い思い出、質問されるの嫌やろ」
舞、しょんぼりと冊子に目を落とす。
睦「滝川君に教えてもらった後で、これ読んで良かったわ。太平洋戦争って教科書の一部としか思って無かったけど、やっと家族の苦しみと向き合えた気がするわ」
舞「ずっと読んでなかったん?」
睦「何か恐くて。でも今回、大東亜戦争の勉強してやっと勇気が出た。いろいろ、ありがとうな。会ったことのない、お祖父さんとお祖母さんの事、初めて深く考えることできたわ」
舞「それ言うたら、私もやん。歴史は単なる学問じゃなくて、私らの人生にまで繋がってるって初めて気がついたわ」
睦「それ読み終わったら、声かけて。子供の時に、ちょっとだけお婆ちゃんから聞いた話するから。きっと、読み終わった後の方が理解しやすいと思うよ」
と、扉を閉めようとする。
舞「なあ、お母さんが、お婆ちゃんの思い出壊したんちゃうで。ルーズベルトとトゥルーマンとソ連が壊したんやで」
睦「……せやな」
と、寂しそうな笑みを浮かべて部屋を出る。
舞、冊子を読む。
○中学校・教室(朝)
ホームルームの時間。
教壇に立つ水野。
水野「もうじき卒業式やけど、卒業制作どんな感じや。滝川ー」
滝川、パンを頬張りながら、万事OKとばかりに親指を立てる。
水野「おい、朝飯、家で食うてこいよー。ほんで、何割ぐらいできてるねん」
滝川、浪川の背中を叩く。
浪川「痛っ。(滝川に)お前に聞いてるんやろ。俺は、お前の小間使いやないっちゅうねん」
滝川、頬張った口を指差す。
浪川「(水野に)あー、0.9割ぐらいです」
水野「えーーー!」
浪川「もうじき終わるやん」
水野「いやいや、もうじきやないやろ。0.9割やったら、全体を10とした時、全体の1も終わってないってことやで」
浪川「……え?」
水野「お前、歩合の数、分かってるか。10のうち9できてるんやったら、9割で、ええねんぞー。もうじき受験やし復習しとけよ。これも出ることあるからなー」
浪川「ほ、ほ、ほんまに、いっ、1割もできてへんし」
滝川、浪川の頭を叩く、
滝川「何で、みんなの努力踏みにじってまで、そんなセコい見栄張るねん。(水野に)先生、来週には組み立てられるから」
水野「おお、そうか! やったなぁ! みんなお疲れさん」
生徒たち、気だるそうにガッツポーズ。
生徒たち「おおー」
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