第六章 滝川大先生の『日本近代史、本当のところ』(その2)
○舞の自宅・居間(夜)
座卓に置かれた『東条英機の宣誓供述書』と数冊の大東亜戦争の書籍。
『パール博士の日本無罪論』を読む睦。
舞、卒業制作をせっせと彫刻刀で彫る。
睦「茶番の国際裁判、政治工作、日本丸ごとマインドコントロール……スパイ映画とSF映画が何本か撮れそうやな」
舞「これ、全部、現実やから」
睦「敗戦後の事は分かったけど、日米開戦の経緯が、いまいちピンとこんねんなぁ」
舞「真珠湾攻撃やん」
睦「それ、きっかけやん。そこに至る経緯やん、知りたいのは。本、読んでても、それぞれ内容が食い違ってるし」
舞、難しい顔で考え込む。
○中学校・図書室
舞と滝川、長机に向かい合って座る。
滝川、頭を抱えて数学の問題を解く。
舞、大東亜戦争の書籍を読みながら、
舞「最新鋭の戦闘機は数学無しに動かせんよ。お父さんみたいな航空自衛隊員になりたいんやったら勉強、勉強! 教科書とか見ながらでもいいから自力で解いてみぃな」
半泣きで問題集と睨めっこする滝川。
舞「昨日、お母さんとかなり考えててんけど、答え出ぇへんねん」
滝川「うるさい!」
舞「……これだけ物量違うの分かってて、何でアメリカと戦争してんやろ?」
滝川「邪魔すんな」
と、教科書を前から後ろからパラパラめくって解法のヒントを探す。
舞「やっぱり真珠湾攻撃が発端やんなぁ」
滝川、ページをめくる手を止めニヤリと笑う。
滝川「日本に先制攻撃させるように、仕向けた奴がいてる」
舞「ああ、陸軍の暴走」
滝川「自分で真珠湾や、言うといて、何で陸やねん!」
舞「だって戦争になったんは、陸軍が暴走したからって、テレビとかでよう言うてるやん」
滝川「テレビはGHQに毒されてる言うてるやろ」
舞「だけど70年も経つねんで」
滝川「奴らは、未だに日本が占領されてると思ってるんちゃうか。お人好しやから自分らで報道規制かけてるんやろ」
舞「小学校の先生も言うてたで」
滝川「何年の?」
舞「6年」
滝川「何組?」
舞「1組」
滝川「ああ、バリバリの共産主義者やがな」
舞「普通の格好してたで」
滝川「共産主義者は、どんな格好してると思ってるねん?」
舞「え?」
滝川「え?」
舞「脱線せんと、早く教えてぇなぁ」
滝川「え、俺が悪いん?」
舞「回りくどい言い方するから、混乱してきたやん」
滝川「あ……まぁ、いいや。スターリンの三方面の秘密工作が日米開戦に大きく影響してる」
舞「どう、三方面よ」
滝川「日本、アメリカ、中国。それぞれスパイを送り込んで、ソ連が有利に動くために工作してんや。それぞれの国のソ連の協力者……共産主義者やな。と共謀して、国策をねじ曲げた。要するに日米の和平を邪魔した訳や」
舞「日米やのに、何で中国が関係あるん?」
滝川「中国の蒋介石が、日中関係を引っ掻き回した奴やけど、蒋介石の裏ににも工作員がいててんや」
舞「だから、日中がどう日米に絡むんよ」
滝川「黙って聞いてたら分かる! 段取り、邪魔すんな」
膨れっ面の舞。
滝川「まずは日本。ゾルゲっていうソ連のスパイと、朝日新聞の記者、尾崎秀実が、時の政権、近衛内閣に近寄って『ソ連と戦争するより、英米と戦争した方が国益になる』と言葉巧みに言いくるめて矛先をソ連から英米に向けさせた」
舞、手を挙げる。
舞「はい!」
滝川「何や」
舞「そもそも何で、日本はソ連と戦争しようとしてたん?」
滝川「ロシアは寒い国で、暖かい土地が欲しくて中国への侵攻を狙っててんや。だけど日露戦争で敗れて、簡単に中国に攻め入ることができんようになってんや」
舞「何で? 中国に日本の土地無いやん」
滝川「あったよ。日露戦争で勝った時に、遼東半島の租借権と東清鉄道を監督権をもらってた」
舞「勝ってんやったら、戦争する必要無いんちゃうん」
滝川「ソ連は油断ならん国や。負けてもまだ南の土地への執着は捨てきれんと、ちょっかい掛けてきてた。だから、日本国内でソ連を警戒する『北進論』と太平洋の資源を渇望する『南進論』に軍略論が分かれててん」
舞「ゾルゲと尾崎秀実は、日本の記者クラブみたいな所で知り合ったん? 『何かトクダネ無い』的な日常会話からお近づきになったとか」
滝川「いや、上海租界や。中国は上海で外国人に対して言論の自由と政治活動の自由を保障しててん。いわゆる治外法権やったから、スパイ天国になってた訳や」
舞「え? あの中国で」
滝川「当時の中国は、西洋人がやりたい放題や。ゾルゲと尾崎は上海でソ連の大規模な工作組織のメンバーになった」
舞「ゾルゲと尾崎は日本で何やらかしたん?」
滝川「尾崎は中国問題の専門家っていうところを高く評価されて、近衛首相とか多くの政治家から中国分析を頼りにされるようになった。その挙句、第一次近衛内閣嘱託として首相官邸に机まで与えられた」
舞「え? ソ連のスパイを首相官邸に出入り自由にさせた……大事な情報、盗みたい放題やん」
滝川「情報の流出以上に奴らの重要な任務は、最初に話したソ連から英米に矛先を向けさせることや」
舞「日本、ロシアに勝ったのに、これじゃ、やられたい放題やん」
滝川「その上にゾルゲは日本人に愛される外国人記者に成り済まして、ドイツがソ連に侵攻する情報を掴んで事細かにソ連に伝えた……ただ、当時のソ連の最高指導者のスターリンは得体の知れんゾルゲの情報に見向きもせんかった」
舞「っていうことは」
滝川「ゾルゲの情報は正確な日本政府の情報やねんから、当然のことながら、情報通りドイツはソ連に侵攻して、ソ連は大敗した」
舞「やれやれ、一安心やね」
滝川「いやいや、これでゾルゲの情報の正確さが認められてしまったんや。その後、ゾルゲからの情報をソ連は採用し始めた」
舞「まさか」
滝川「そう、尾崎が内閣に『南進論』を推して推して推しまくった挙句に、政府が決定した時も、ゾルゲはソ連にその情報を伝えた。それでソ連は戦争の相手をドイツだけに力を集中することができた」
舞「誰も気づいてなかったん? 警察とか」
滝川「特高警察が裏で捜査してたよ。もう後、一歩のところやってんけどな。ゾルゲがソ連に日本の軍略を送ったのが1941年10月4日、特高警察が逮捕したのが1941年10月18日。その3日前に尾崎が捕まってる」
舞「ソ連の工作活動は成功したんや」
滝川「まあな。ほんで、次はアメリカ。こっちはこっちでかなり怖い。共産主義者にホワイトハウス乗っ取られててんから」
舞「……え?」
滝川「日米開戦の要因の一つになった『ハル・ノート』。これを起草したのが財務省長官のモーゲンソーって言われてたけど、更にその元になる原案を考えた奴がいてる」
舞「ちょっと待った! 『ハル・ノート』って……何?」
滝川「日米開戦の話聞きにきて、こんな重要なもんも知らんのんか!」
舞「だから聞いてんねんやん。教科書に載ってないし……っちゅうか、明治以降、テストの範囲外とか何とか言われて教わってない気がする」
滝川「それは、日教組の連中の謀略や。戦後生まれの俺らは、明治以降の歴史は自力で本を読み漁って知識を身に付けるしかない!」
舞「に、ニッキョウソって、え、え、え? ソ連みたいな悪の地下組織的なやつ? 暗闇をフード付きのマント被って、ロウソク持って猫背で歩いてそうな。え、え、え? 先生がそいつらに操られてるってこと」
滝川「中々、いい線いってる」
舞「そんな危険な組織に操られてるのに、国は黙ってていいん?」
滝川「先生は操られてるんじゃない。まさにその悪の組織、日教組の一員やから! 日教組、正式の名を『日本教職員組合』という!」
舞「……それって、先生らの組合ちゃうん?」
滝川「奴らは、聖職を逆手に取って、教育という名の共産主義的マインドコントロールをしてる!」
舞「と、都市伝説やん、先生の組合がそんなん……悪の組織って言うてもた。(周囲をキョロキョロしながら)内申書に響かんやんなぁ」
滝川「都市伝説やない! 奴らは、憲法第9条をこよなく愛し、聞こえの良い言葉で日本文化や日本人を罵倒して共産主義を我が国に根付かせてる危険人物の集まりや」
舞「え? 水野先生も?」
滝川「あのおっさん、付き合い程度やろ。共産主義者の勢いがない。平和ボケでボーッとし過ぎや」
舞「なんか混乱してきたけど、今のことは、後回しや。で、『ハル・ノート』って何よ?」
滝川「別名を『雪作戦』。これもソ連が仕掛けた作戦や」
舞「雪? ソ連、寒いもんなぁ。行ったことないけど」
滝川「本物の雪とは関係ない。ハリー・デクスター・ホワイトっていうアメリカ財務省のエリート官僚のことや。そいつの名前の『ホワイト』から作戦名をとってる」
舞「またもや、大胆に国のど真ん中に突撃やな。アメリカまでって、どんだけセキュリティ緩かったん」
滝川「ホワイトは共産党員じゃなかったけど、財務省の機密を共産党員のチェンバーズに渡してた。1938年から 3年ほど、チェンバーズの離党とソ連国内の混乱でソ連との接触は途絶えた」
舞「ソ連で混乱……血生臭い匂いがする」
滝川「鋭いな。レーニンの没後、強迫観念に囚われたスターリンは秘密警察を動員してソ連の指導者、将校らを逮捕して処刑させた。その数、数十万人。ドイツが侵攻した時、指揮系統を潰したソ連軍は、素人ばっかりの軍隊になってしまって混乱を極めた挙句に大敗した」
舞「指導者の強迫観念だけで、同じ国のゾルゲの機密情報も無視する訳や」
滝川「とは言え、仮に情報受け取ってても、素人だけじゃ戦える状態やないわな。それから、3年後の1941年5月、ようやくソ連が別の共産党員を送り出した。ウインテカー・チェンバーズ。雪作戦、始動」
図書室のスピーカーから音楽が鳴り始める。
放送部員の声「間も無く下校の時間です。各部は戸締りをして」
滝川「続きは、また明日」
舞「ええー、ええー」
滝川、本を数冊渡す。
滝川「予復習して来い」
と、荷物をまとめると鞄を持って扉に向かう。
舞、頬杖つきながら渡された書籍をペラペラめくる。
図書委員、舞に近づき、
図書委員「さっさと片付けて出て行ってもらえます?」
舞、机の上に広がった何冊もの書籍を慌ててかき集める。
舞「(半泣き気味に訴える)片付けるん手伝ってー」
図書委員「片付ける時間も考えて、広げてくださいよ」
舞「ご近所さんのよしみやん」
図書委員「他の人に示しがつきませんので」
舞「あんたが3つの時にお漏らししたのん、私が掃除」
図書委員、舞の口を押さえる。
図書委員「(小声で)彼女が近くにいてるから、やめてもらえる」
図書委員の彼女、図書委員に手を振る。
舞「大人になったなぁ」
と、図書委員の方に数冊の本を押し付ける。
図書委員、ふてくされて数冊の本を抱えて本棚にしまい始める。
図書委員「偉そうに……2つしか変わらんやん」
舞「男前やなぁ。(図書委員の彼女に手を振りながら)あんたの彼氏、優しいし、めっちゃいい奴やでー」
首を傾げる図書委員の彼女。
舞、残っている書籍を本棚に片付け始める。
○舞の自宅・居間(夜)
舞と睦、滝川に渡された本を貪る様に読んでいる。
睦「今まで教わったこと、何やってんやろ?」
舞「日本はGHQの考え方に固執してるけど、アメリカの有識者は太平洋戦争の考え方が、時代とともに変化してるねんて。全員が全員、真珠湾攻撃が悪って思ってないみたい」
睦「しかし、共産主義って恐ろしいなぁ。スターリンって、強迫観念だけで何千万人も殺したって書いてるで」
○中学校・図書室
舞と滝川、向かい合って座っている。
滝川、腕を組んで椅子の背にもたれている。
舞、ノートや筆記用具を広げている。
滝川「今日は、予習の発表会や。どうぞ」
舞「え?」
滝川「インプットだけじゃ、頭に入らんやろ。インプットとアウトプットを両立させて初めて脳に知識が蓄積する」
舞「誰の受け売り?」
滝川「俺様で人体実験済みや。始めろ」
舞「偉そうにー。何なーん」
滝川「予習してないんか?」
舞「したよ!」
滝川「はよ、やれ言うねん。『雪作戦始動!』はい、アメリカは、どうなっていく?」
舞、不服そうにノートを開く。
舞「1941年4月、ソ連はヴィタリー・パブロフをワシントンに送り込んで、ホワイトに雪作戦の指示を出した」
滝川「どうやって指示を出した?」
舞「レストランに呼び出して、雪作戦のメモを見せた。ホワイトがそのメモを持ち帰ろうとしたら、パブロフは持ち帰りを拒否して暗記する様、指示した」
滝川「何が書かれててん?」
舞「『日本が中国と満州への侵略を中止して軍を撤退させること』、『日本が軍備の大部分をアメリカに売ること』」
滝川「ホワイトは、そのメモの内容をどうやって実行した?」
舞「最初は1941年5月に財務省の上司、モーゲンソー財務長官に覚書の形で提出した。内容は『米・英仏による外交の失敗に対する非難』と『日・独・伊に対して何もしないのは、アメリカにとって致命的』」
滝川「小言、言うただけ?」
舞「ソ連優位で日本を叩きのめせくらいの勢いの『ハル・ノート』原案を作成してた。前半の日本政府への提案は、一見日本が有利に見せかけてるけど、実は全部ペテン。例えば『排日移民法の廃止をする法案を議会に示し』ってあるけど、議会に提出したところで否決されて廃案になる可能性もある」
滝川「後半は?」
舞「パブロフの指示実行やね。さっきのメモにぜい肉つけた程度で、全くオブラートに包んでない」
滝川「例えば?」
舞「『すべての陸海空軍および警察力を満州建国前の中国までとインドシナおよびタイから撤収する』とか、『日本が軍備の半分をアメリカに売れ』とか『日本の軍備の半分をアメリカに貸与しろ』。。。パブロフより、ど厚かましい。大部分どころか全部日本の軍備をアメリカに渡して
日本は丸腰になれって内容になってる」
滝川「それは作成されて、すぐ日本に提示されたん?」
舞「いや、日米交渉のテーブルにはまだ乗ってない」
滝川「この当時のアメリカの他の政治家とか軍人の日米開戦に対する反応は?」
舞「外交当局とか財務省は対日制裁を強化してたけど、駐日大使のグルーとか陸海軍のトップは反対やった。そもそも、アメリカ国民は日米だけじゃなく、ヨーロッパ戦線も含めて参戦は反対してた。だから、その国民感情に合致した公約『不戦の誓い』を立てたルーズヴェルトが大統領選に当選したって経緯がある」
滝川「日本は?」
舞「一部の陸軍が積極的やったり、一部マスコミが国民感情を煽ってた感はあるけど、天皇陛下を始め、真珠湾攻撃の指揮を取ってた山本五十六とかは日米開戦を反対してた」
滝川「アメリカで日米開戦を反対してた人らは、何か行動起こしてた?」
舞「11月の時点やったら、日米開戦の回避論が大勢やった。駐日大使のグルーとか日米開戦を避けたい人らで、暫定協定案が作成されてた。日本にとって一番厳しいアメリカの制裁は資産凍結と石油の禁輸やったから、暫定案はそれを緩和する内容を盛り込んだもんやった」
滝川「例えば」
舞「フランス領インドシナ……えっとー、現ベトナム、ラオス、カンボジアに進駐していた日本軍が撤退するんやったら、アメリカは資産凍結や石油の禁輸を緩和するとか」
滝川「日本は同意した?」
舞「もちろん! 日本側も、日米開戦を望んでないから大使二人を訪米させて、ハル国務長官と協議して同意した」
滝川「それは、いつ?」
舞「1941年11月15日」
滝川「でも、11月26日に日本側に提示された『ハル・ノート』の内容はホワイトの原案に近いのは何で?」
舞「11月17日、和平案に日米が同意した情報を手に入れたホワイトは、血眼で和平案を潰そうとしたから。ホワイトは勝手に上司のモーゲンソー財務長官の名前使って、ルーズヴェルト大統領にメモを送ったんよ。ルーズヴェルトを持ち上げながら、日本に対する悪印象を残すような文面で」
滝川「日米交渉を主導してた国務省を無視して、モーゲンソー財務長官も寝耳に水やった訳やな」
舞「メモと同じタイミングで強硬な対日案として『モーゲンソー試案』もルーズヴェルト大統領に送られた。これが最終的なハル・ノートの元になった」
滝川「だけど、ホワイトの思うがまま、国務長官はすぐに強硬対日案を日本に叩き付けた訳やないやろ。日米交渉主導している自分らスルーしてるねんから」
舞「そう! 11月25日までハル国務長官は、和平案の暫定構想案で進めようとしてたんよ。だけど、またソ連の工作員が止めを刺しに掛かってきた。その工作員は、大統領補佐官のラフリン・カリーと蒋介石率いる中国国民党の顧問で派遣されてたオーウェン・ラティモア」
滝川「いよいよ、中国が絡んできたやん」
舞「そうやねん。わかってきたよ、私!」
滝川「じゃあ1941年11月25日から11月26日の間に何があってん?」
舞「1941年11月25日、中国のラティモアから蒋介石のメッセージとして公電をカリー宛に送ってきた」
滝川「ラティモアとカリーの関係は?」
舞「カリーはソ連の工作員で、カリーがラティモアを中国国民党の顧問に送り出したんよ」
滝川「ラティモアの公電は何て書いてたん?」
舞「日米の和平案に対して強い反対の意思を示してるとか、中国人はアメリカへの信頼を失うとかって。それを助長したんがカリー。ラティモアからの伝聞やから、ほんまに蒋介石のメッセージか、わからんのにカリーが『蒋介石からのメッセージ』って更に助長したんよ」
滝川「それでハル国務長官は」
舞「1941年11月26日、ハル国務長官は日本の大使を呼び出して、ホワイト原案の対日強行案『ハル・ノート』を突き付けたんよ」
滝川「だけど日米和平を放棄したんは、蒋介石のメッセージだけ?」
舞「文書で残ってるんはそれだけやねんて」
滝川「よくやった! せやな。ルーズヴェルト大統領の日米開戦の決断と蒋介石のメッセージの因果関係が、はっきりするんはこれからってとこやな」
と、書籍『日本は誰と戦ったのか』を閉じる。
舞「1941年……昭和16年12月8日真珠湾攻撃」
と、一冊の本を開く。
開かれたページは真珠湾攻撃に関する写真と説明が記載されている。
○回想・アメリカ・ホワイトハウス前
T「1941年アメリカ」
ホワイトハウスの前景。
門の前で大勢のアメリカ人が、プラカードを持って大声で叫ぶ。
滝川の声「『非常事態を作った原因を叩きのめせ!』と、世論が騒ぎ出す」
プラカードに赤字で書かれている『Remember Pearl Harbor!』の文字。
○再び中学校・図書室
滝川「ソ連の工作は大規模で巧妙やった」
舞「アメリカは太平洋戦争の終戦後、すぐに共産主義者に対する調査会とか作って公聴会開いたり、追求したりして取り締まったのに、何で日本はまだ放置してるんやろ」
滝川「危険やな」
舞の開いている本に記載されている開戦の詔勅(仮名が振られている)。
舞「開戦の詔勅……天佑ヲ保有シ萬世一系ノ皇祚ヲ踐メル大日本帝國天皇ハ昭ニ忠誠勇武ナル汝有衆ニ示ス 朕茲ニ米國及英國ニ対シテ戰ヲ宣ス」
滝川「そう、昭和一六年一二月一日の御前会議で陛下はご聖断を下された。この攻撃も慎重に慎重をを極めた。攻撃命令までにアメリカ側が何らかの改善する動きが、あったら即時攻撃は回避することになってたんや」
舞、本を開いて真珠湾攻撃の写真を見る。
滝川「『戦うも亡国、戦わざるも亡国。戦わずして滅びるのは、民族の魂まで失う、真の亡国である』海軍軍令部の永野修身総長の言葉や」
© 黒猫 2012-2020
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