読書と王国説と呪と〔テイト、デリヤ〕

テ「あ、デリヤ、何読んでるの?」


デ「僕が何を読もうと僕の勝手じゃないか」


テ「そうなんだけど、僕も本が好きでね。見たところ王国説の研究書のようだけれど、それ、僕も読んだことがあるんだ。興味深いよね」


デ「……王国説に興味があるのかい?」


テ「最初は半信半疑だったんだけど、段々疑う方が難しくなってきたような気がしてるよ。中央は相変わらず躍起になって否定してるけどね」


デ「君はこれまでにどれくらい、王国にまつわる本を読んだんだい」


テ「そうだなあ……数を数えたことなんてないから分からないけど、五百かそれ以上は読んだかな」


デ「僕以上だ……」


テ「ん? デリヤ、今何か言った?」


デ「君の気のせいじゃないかい。王国について、君はどこまで知ってるんだい?」


テ「ほとんど知らないよ。白暦1年に大規模な焚書が行われたことで、王国にまつわる本のほとんどが失われてしまったのはデリヤも知ってるよね。今残されているものなんてファンタジーのようなものばかりで、真実なんて到底分からない。今、デリヤが持ってる本も同じようにね。ただ」


デ「ただ?」


テ「呪のなりたちを考えた書物があるんだけど、その書物を見る限り、現在の呪を扱う技術は明らかに白暦一年より以前に作られて発展してきたものでないと辻褄が合わなくて――」


デ「君は何でも呪に結びつけるね」


テ「専門が呪だからね。ついそうしちゃうんだ。あ、そうだ、デリヤも呪を使うんだったっけ。よかったら今度――」


デ「遠慮するよ。そういうのをお節介って言うんだ」


テ「それなら、別のことでもいいから、デリヤとは今度ゆっくりと話したいな。その本の感想も聞かせて欲しいし。そんな小難しい本読む人って支部にはほとんど居ないから、仲間が出来たみたいで嬉しいよ」


デ「勝手に仲間にするな。とにかく僕は今これが読みたいんだ。話ならその後にしてくれるかい」


テ「分かった分かった。邪魔してごめん。じゃあ、また後でね」

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