支部のお仕事〔ランテ、セト、ユウラ、テイト〕

【黒獣退治】

テ「基本は黒獣退治だよね」


セ「依頼が十件あったら、八件は黒獣関連だよな」


ユ「うち七件は楽な相手よ」


ラ「じゃあ、残りの一件は?」


ユ「強敵ね」


テ「ほら、いつだったっけ、子どもたちを守りながら戦わなきゃいけなかったのって」


セ「あー……あれは大変だったな」


ユ「あんなに怪我したのはきっとあのときくらいね」


テ「終わったときには全員血まみれになってたね。まあ、子供たちが無事でよかった」


ラ「そんなこともあるんだ……。オレに勤まるかな」


セ「やってみれば案外できるものさ」


ラ「そうだといいけど」




【虫アレルギーおばさん】

テ「いるよね、北東住宅街に」


ユ「いちいち家に虫が出たくらいで兵呼ばれちゃ、仕事にならないわよ」


セ「虫に刺されたから癒しの呪使ってくれとか」


テ「僕たちは遠征部隊だからあんまり関わらないけど、ダーフたちが可哀想だよね」


セ「何回か話はしてるんだけどな」


ユ「これからも根気強く説得するしかないわね」




【凄腕呪使い夫婦の大喧嘩】

セ「この事件だけは本当に勘弁して欲しかったな」


テ「ああ、すごかったね」


ユ「これはあたしは知らないわ。どうだったの?」


セ「ユウラは遠征中だったよな。正直オレの手には余ってた」


テ「僕の呪もほとんど通用しなかったよ」


ラ「この二人にそう言わしめるなんて……」


セ「上級呪の撃ち合いだ。呪の研究やってる途中で言い争いになって、大喧嘩に発展したって話らしいな」


テ「まあ、町の外でやってくれてただけよかったよね」


ラ「それで、結局どうやって?」


テ「説得だよ」


セ「その説得も……ノタナさんの怒りを鎮める以上に難しかったよな」


テ「すごく苦労したよね」


セ「あれだけの腕があるなら、研究するより白軍に入ってくれればさ」


ラ「勧誘はしなかったんだ?」


ユ「隊員が夫婦喧嘩で問題起こしちゃ洒落にならないわよ」




【窃盗犯逮捕で惚れられて】

テ「裏町での捜査だったよね」


セ「常習犯だったな。手口が巧妙で警護兵たちも手を焼いてた」


ラ「それをユウラが捕まえたんだ? すごいなあ」


ユ「狙われる店の傾向を探って張り込んでたのよ。たまたまあたしのところに現れただけ」


セ「確かユウラがエルティでは初めて指揮を取った事件じゃなかったか? 支部長も手際のよさに驚いてたな」


ユ「解決までは不思議なほど順調だったのよね。……解決までは」


ラ「解決した後何か問題でも?」


テ「逮捕された窃盗犯がユウラに惚れちゃってね」


ユ「尋問もままならなかったのよ。後のことはダーフに任せたからそれはよかったんだけど」


テ「出所してからもしばらくユウラ追いかけてたね、彼。よっぽど気に入られてたんだよ」


ユ「ほんと、いい迷惑だったわ。何回困るって言っても聞き分けなかったし」


セ「いつの間にか見なくなったよな。どうやって追い払ったんだ?」


ユ「それは……」


ラ「ユウラ?」


ユ「別に……どうだっていいでしょ」


テ「あ、この件はまた詳しく話を聞きたいね」




【中央兵半殺し】

テ「ああ、あの洗礼未遂騒ぎのときだね」


ユ「あのときのあんたは本気で切れてたわね」


セ「何も考えずに手を出したのは、確かにあのときくらいかもな」


テ「殺さずに済んだんだから、一応どこかで加減するよう歯止めかけてたんだと思うよ」


ラ「洗礼未遂騒ぎって?」


ユ「中央兵が北の兵を拉致して洗礼受けさせようとしたのよ。町を出る前に包囲したわ。責任者が適当な言い逃れした上、北の兵のことを侮辱したからセトがね。下級司令官だったけど、治療された後もずっと腰抜かしてたわ」


テ「確かにあのときのセトは怖かったね。水呪でも使ったみたいに空気が凍ってたよ。お陰でそれ以来中央は、北の兵への洗礼は綺麗に諦めたけど」


セ「あの後支部長には怒られたけどな」


ユ「そういや謹慎もらってたわね。後にも先にもあの一度きりじゃない?」


セ「そうだな。感情に流されるな……って分かっちゃいるんだけどさ。まあ、今はあのときよりは成長したと思うよ」


ラ「オレも気をつけないと」


ユ「あんたは大いに気をつけなさい」




【テイトの黒歴史】

テ「あ、ユウラ今笑った」


ユ「べ、別に笑ってないわよ」


テ「セトも笑い堪えてるでしょ?」


セ「……いやいや全然そんなことは」


ラ「皆揃ってどうかした?」


セ「昔、どうしても女性隊員がかなりの数必要な任務があってさ。ウチはそのときから女子はそんなに多くないんだよな。それで……な?」


ユ「あれは……そうね、なんというか……不幸だったわね」


ラ「不幸って何が?」


ユ「どれだけ探してもどうしても一人足りなかったのよ。それで、男子隊員が誰か女装すれば、って話になったのよね」


セ「結局最後は籤になって、それでテイトになったんだよな」


テ「絶対デリヤの方が良かったのに」


ユ「でもまあ、テイトでよかったわよ。アージェの女装とかきっと見られたものじゃないわよ」


セ「一応それっぽくはなってたって」


テ「二人ともいいよね人事だから。セトだってちょっと身長は高いけど、細身だしいけたんじゃない?」


セ「いやオレそういう趣味はないし?」


テ「僕だってないよ!」


ラ「白軍って色々大変なんだなあ」

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