すごい世界〔ランテ・セト・ユウラ・テイト〕

ラ「オレさ、隊長ってもっと後方の安全なところにいて、部下に指示出したりだけするものだと思ってた」


ユ「間違ってないわよ。ウチの隊長がおかしいのよ。真っ先に敵の只中に飛び込んでいく隊長なんて聞いたことないわ」


セ「オレは実戦派なんだよ。フィレネ副長だってそうだろ?」


テ「フィレネ副長はセトほど負傷しないけどね」


セ「それは戦闘スタイルの差だな」


ユ「尤もらしい理由つけてるけど、それは違うわね。だいたいあんたくらいの技術があれば、普通は滅多に負傷なんてしないわよ。ときどき好きで負傷してるんじゃないかって思うわ」


ラ「え、セト怪我好きなの? それって……」


セ「ちょっと待て、なんでそういう話になるんだよ。確かに怪我が多いのは認めないでもないが――」


テ「きっとセトは自分ですぐ治せちゃうから怪我に頓着しないんだろうね。でも傍から見れば確かにそう見えちゃうかも。実戦派ってのもそうかもしれないけど、なんていうか、負傷派隊長だね」


ユ「不名誉な冠辞ね」


ラ「セトってそんな怪我多いんだ?」


テ「多いね」


ユ「多いわ」


ラ「オレももう何回か怪我したけど、大したことなくてもすごく痛い。できるならしたくないって思うけどなあ。やっぱり……」


セ「あらぬ嫌疑をかけるな。オレだってできれば怪我したくないって」


ユ「流血しても骨折っても平気な顔してるわよね。あんた神経通ってるの?」


セ「そりゃまあ普通に。お前はオレを何だと思ってるんだ」


テ「あんまり怪我ばかりしてると、そういう目を向けられることにもなるって話だね」


セ「怪我に慣れておくのも、結構役に立つんだけどな」


ラ「役に立つって?」


セ「多少の怪我じゃ動じなくなるし」


ラ「なるし?」


セ「どこの怪我が一番厄介か知ってれば、色々使えるしさ?」


ラ「え、使える?」


テ「あ、そっか。それは使えるね。たとえばどことか?」


セ「オレの場合一番困るのは足だけど、一般的には武器使いなら利き腕はもちろん、背中も結構きついな。武器を動かすたびいちいち響く。あと胸部から腹部にかけては痛みが尋常じゃない。精神的にもダメージ受けるだろうし、治療も難しい。たいていそこを狙っておけば確実に動きを止められる。ただ胸部の場合は肋骨に引っ掛かる可能性もあるから、確実に狙わないとな」


テ「なるほど、参考になるね」


ラ「うわあ」


セ「なんだよその反応」


ラ「いや、うん……セトとテイトは絶対敵に回したくないなと思った」


セ「それはどうも。でもオレたちはまだ温い方だ。東の連中なんかは一撃で仕留めにいく」


ラ「今さらながら、すごい世界に足踏み入れちゃったんだな」


ユ「ほんとに今さらね。いい加減腹括りなさいよ」


ラ「うん、努力……する」

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