北支部の日常編

第一回呪部門基礎講座

 こんにちは、北支部呪部門主任教官のテイトです。本日の講座は、僕が担当します。よろしくお願いします。


 まず、呪に興味を持ってくれたことを嬉しく思っています。純粋な呪使いを目指すのならもちろんのこと、武術を主に学んでいこうとする人たちにとっても、呪を学ぶことは重要であると僕は考えています。呪を扱えるようになることで、できることの幅が飛躍的に増えます。これから呪を学んでみて、苦手だと感じることがあったとしても、せめてどうにか防御呪を一つ会得するところまでは踏ん張って欲しいと思っています。


 さて、みなさん。おそらく今日、これから呪を使えるようになるのだ、そのための練習ができるのだと、わくわくしながらここに足を運んでくれたのでしょう。ですが残念ながら、まだこれからしばらくは実践的な訓練は行いません。では何をするのかと言うと、座学です。……今あからさまに落胆した方が何人もいましたが、呪使いにとって座学はとても重要なんです。呪の世界は、知識が物を言う世界です。しっかりと勉強した上で相手の呪使いが何の属性の呪を使うか分かれば、どんな呪を使って来るのか、それにどう対処すればいいのか考えることができ、格段に戦いやすくなります。というよりも、それができるのは戦場に立つ者として当たり前のことです。できなければ、死にます。強い言葉を使いましたが本当のことです。呪の発動の直前の兆候、使われている呪力量、紋章呪であれば広がった紋。そういう情報から今使われてようとしている呪が何なのか見抜き、いち早く対処する。それができる人たちだけが生き残っていく。そんな過酷な世界に足を踏み入れようとしていることを自覚して励んでください。


 指定教本は、みなさんお持ちですね? その教本の第一章が属性呪一覧になっています。百ページ程度あるかと思いますが、これをできれば全て、難しいならせめて下級呪と中級呪までは全部、次回の講座までに覚えてきてください。……いえ、冗談ではありません。僕は本気で言っています。まずは呪がどんな技術なのか知ることが大事ですから。これは何も、身を守るためだけでもありません。みなさんが楽しみにしている呪の会得に向けての第一歩にもなります。各属性呪には、それぞれ属性ごとに得意なこと、不得意なことがあります。僕は今回あえてそれについては触れませんし、この教本にも書いてありません。呪を覚えながら、自分でそれを見出してください。そして、自分が呪に求めることは何なのか、それならばどの属性の呪を会得するのが望ましいか。これもまた、次回までに考えてきて欲しいんです。もちろん、各々の呪力には適性がありますから、望んだ通りの属性呪が使えるようになると約束はできませんが、努力で適性の壁を乗り越えることができた人も、これまでにはいました。ですから、適性を確かめる前に、まず使いたい属性を探してもらうことにしています。


 では、今回の講座はこれで終わりにしましょう。ええ、初回は短いんです。知識のない人間に教えることはありませんから。本当に呪が使えるようになりたいと思うのならば……分かりますね? 呆然としている人が多いですが、今度の講座まであと五日です。間に合うんでしょうか。ぜひ時間は大事にしてください。


 それでは、また次の講座でお会いできるのを楽しみにしています。本日は、お疲れ様でした。

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