第2話 水の妖精! 二人目のフェアリーガール

『フェアリーフラワー、と彼女は名乗ったのか?』


 魔法の通話画面越しでスーツ服を着込んだ男性がメガネを立てて確認をとります。知的で賢そうです。


「はい。正体はまったくわかりませんが」


 オニキスに変身した少年は礼儀正しい態度で答えます。


『それはもしかして、妖精少女かもしれませんデデ』


 メガネの男性の画面から紫色のボールに手足が生えた悪魔デクが出て来て言います。


「ようせいしょうじょ!?」


 少年の方にいる悪魔アビは驚きます。


「アビ、妖精少女とは何だ?」


 少年が問います。


『妖精少女とは、妖精界の王女フェアリープリンセスを決める候補者の人間だビビ』

「なるほど、我々悪魔少年と似たようなものですか」


 メガネの男性は納得します。


『そうデデ。だけど、俺達悪魔界と奴等妖精界は敵対してるから詳しいことはわからんデデ』

『そうですか。それでは調べてみる必要がありますね』

「村崎さん、うちの学校を調べるんですか」

『はい、話を聞く限り我々悪魔少年の障害になるかもしれませんからね。いけなかったですか黒原君?』


 村崎と呼ばれた男性は確認をとります。


「いいえ、そんなことはりませんよ」

「そうですか。それでは近いうちに行きますね。それではこれで」


 魔法の通話画面が閉じます。


「妖精少女……フェアリーフラワーか……」


 黒原は目に焼き付いた彼女の姿を強く思い浮かべます。


「……また会えたらいいな」



******************



「リリは妖精の国からきたリリ」

「妖精の国?」


 愛花とリリは一緒に学校から帰宅して部屋に入ったところで、愛花はリリに説明を求めました。

 その最初のやり取りがこれです。


「リリ達は妖精界の女王・フェアリークイーン様からお願いされて人間界にやってきたリリ」

「お願い?」


「妖精少女・フェアリーガールを見つけ出すことリリ!」


 リリは愛花へビシッと指を差して言います。


「フェアリーガール? 私のこと??」

「そうリリ! 桃宮愛花! いや、フェアリーフラワー、君のことだリリ!!」

「ま、まってまって! 私がフェアリーフラワーでフェアリーガール? わけがわからないよ!! そもそもフェアリーガールって何??」

「フェアリーガールといのは妖精界の王女様・フェアリープリンセスの候補になる人間のことだリリ」


「妖精界の王女様? フェアリープリンセス??」


「フェアリープリンセスは未来のフェアリークイーン様だリリ」

「あ、えっと、そうだよね。王女様は将来女王様になるんだもんね」


 そのあたりは愛花の頭でも理解できたみたいです。


「そうリリ! つまり、リリ達の役目は未来のフェアリークイーン様を見つけ出すという大事な役目なんだリリ!!」


 リリは胸を張って言います。


「しかも、その未来のフェアリークイーン様はすぐに見つかったリリ! リリはラッキーだリリ!!」

「それが私なの? 私が未来のフェアリークイーン様??」

「君なら必ずフェアリープリンセスになって未来にはフェアリークイーン様になれるリリ!」

「え、ええ!?」


 愛花は困惑します。

 それはそうでしょう。

 いきなり、自分が未来の女王様だって言われてすぐ信じられる人はいません。……正確に言うと、王女様候補なのですけどね。


「ちょっ、ちょっと待って! なんで私がそのフェアリーガールなの!? 私どこにでもいる普通の女子中学生なんだよ!!

「魔法を使う素質が愛花にあるリリ」

「魔法を使う素質?」

「魔法は自分がイメージしたものを『現実にできる』と信じることで使えるようになるリリ! フェアりーフラワーは花びらが剣になると信じたから剣になったリリ!!」

「あ、あれは無我夢中だったから……」

「それだったらもう一回やってみるリリ!」


 リリは愛花の制服についた桜の花びらをとって渡します。


「ふぇ、フェアリーマジック!」


 愛花はむずがゆい感じで魔法の言葉を唱えます。


「……あれ?」


 ですが、花びらが剣に変わることはありませんでした。


「も、もう一回やってみるリリ!」


 リリは焦って言います。


「う、うん……フェアリーマジック!」


 ですが、花びらが剣に変わることはありませんでした。


「もう一回リリ!」

「フェアリーマジック!」


 何回やっても結果は同じです。花びらは剣に変わりません。

 二人はお母さんに注意されるまで続けました。



******************



 魔法が本当にあって、自分にもできたら素敵だな、と、愛花は思っていました。


「一度はフェアリーフラワーになって、かっこよく剣を使えたんだから、またできるようになるリリ!」


 リリはそう言って、愛花を励ましてくれました。

 「うん……きっと、そうだね!」と愛花は空元気でそう言います。


「おはようございます、愛花さん」


 優水が挨拶します。


「おはよう」

「今日は遅刻しなかったのね」

「えへへ、そう毎日寝坊はしないよ」


 本当はリリに無理矢理起こされただけなのですが、愛花は得意顔です。

 そのリリはというと、愛花のポケットの中にいます。


「学校には悪魔が出るリリ。調べたみたいリリ」

「あくま?」

「妖精界と敵対しているリリ。あいつらが人間界にやってきて何か企んでいないか調査して、クイーン様に報告するリリ」

「妖精って大変だね」


 と、そういうわけで愛花はリリは学校に連れてきした。


「黄唯ちゃん、まだ来てないね」


 まだ空席になっている黄唯の席を見て言います。


「彼女はいつもギリギリだから」


 優水は答えます。


キンコーン


 始業のチャイムが鳴り始めます。


ダダダダダダダダ!!


 それと同時にけたたましい足音が聞こえてきます。


カンコー

ダダダダー!!


 教室のドアが勢いよく開けられます。


「セーフ! セーフよね!?」


 チャイムが鳴り終わる直前で黄唯は入ってきます。


「うん、セーフだよ黄唯ちゃん!」


 愛花はそう言います。


「あ……」


 愛花にそう言われて、黄唯は我に返って顔が真っ赤になります。


「ありがとう……」


 かすれた声でお礼を言って、自分の席に着きます。



******************



 さて、数学の時間です。


「それじゃ、この方程式を解ける人いますか?」


 数学の男性教師は生徒へ呼びかけます。

 黒板には


5x + 2y = 12

3x - 2y = 4


 と書かれています。


「すうがくにがて~」


 愛花は全然わかりません。


ZZZ


 黄唯は教科書を枕代わりにして寝ています。


「はい!」


 そこで優水が挙手します。

 彼女が選ばれます

 優水は瞬く間に黒板に計算を書いていく。


x = 2,y = 1


 もちろん、正解だ。


「優水ちゃん、すごーい!」

「当たり前よ」


 前の席の女生徒が愛花へ言います。


「青神さんは学年末で一番の成績だったんだから」

「一番! 一番って二年生で一番頭がいいってこと!?」

「そ、そうよ」


 愛花は優水へ尊敬の眼差しを送ります。黄唯は相変わらず眠ってます。



キンコーンカンコーン


 放課後のチャイムが鳴ります。

「優水ちゃん、一緒に帰ろう!」

「え、私?」

 優水は驚きます。

「ごめんなさい。これから生徒会があるから」

「生徒会!?」

「ええ、書記をやってるのよ」

「凄い!」

「大したことじゃないから、それじゃ」

 優水は行ってしまいます。

「それじゃ、黄唯ちゃん……」

「ごめん、急ぐから!!」

 黄唯は本当に急いで教室を出て行きました。

「あぁ……」

 愛花は一人になりました。

「愛花、校内に悪魔がいないか調べてほしいリリ」

 リリが内ポケットから提案します。

「あ、うん、そうだったね」



******************



「とはいったけど、ここどこ!!?」


 愛花は迷いました。

 転校三日目ですから、まだ校内がよくわかっていませんからね。


「悪魔を探すどころか迷子リリ」

「ごめん、まだ転校したばかりでよくわかっていなくて……あ、花!」


 愛花は花壇で咲いている花に目を奪われます。


「キレイ……!」

「確かにキレイリリ」


 リリも顔を出します。


「今、植え替えているところなのよ」

「ええ!?」


 後ろから声がして愛花は驚きます。

 振り向くと、体操着を着た女子が鉢植えを持って立っていました。


「あ、ごめんなさい」


「ううん、驚いちゃってごめん。私、桃宮愛花、よろしくね!」

「植野花凛(うえのかりん)よろしく」


「あなたが花壇をお世話してるの?」

「うん、私が園芸部だから」

「ステキ!」

「そ、そう?」


 花凛は照れながら、鉢植えの花を花壇へ移し替えていきます。


「これ、みんな移し替えるの?」

「ええ、その時期だからね」


 見る限り、花壇にはまだまだスペースがあっていっぱい移し替える必要があるみたいです。


「私も手伝いたい! ね、私も手伝っていい!?」

「え、手伝う?」


 花凛は驚きますが、愛花が真面目なのはすぐにわかったので、こっちだと案内します。


「いっぱいあるね!」


 愛花は腕をまくってはりきります。それを見て、花凛は本当に手伝ってくれるんだと驚きます。


「よおし、頑張ろうね花凛ちゃん!」

「う、うん……」


 これだとどちらが園芸部かわかりませんね。




 それから何度も何度もよいしょっと、花壇へ鉢を運びます。

 全部の鉢を花壇に移し替えると、すっかり汗だくになっていました。


「ハァハァ……」

「ありがとう、愛花さん」

「ううん、素敵な花壇になってよかったよ!」

「本当にね」


 二人して、出来上がった花壇を見ます。

 青のパンジー、白いスイセン、そして、赤、白、黄、三色のチューリップが彩っています。確かに素敵な花壇です。


「でも愛花さん、制服が砂まみれじゃない?」


 花凛は申し訳なさそうに言います。


「あ、ううん! これぐらい大丈夫だよ!!」

「そう……それじゃ、水やりをしましょうか!」

「水やり! やりたいやりたい!!」

「えぇ、それじゃホースをもってくるわね!」


 花凛は快く返事をします。すっかり息があってきましたね。


「あら、愛花さん」


 隣の方から声がします。


「優水ちゃん! どうしてここに?」

「私は生徒会の備品を取りに、ここが近道だからね。あなたこそどうしたの?」

「花壇に花を植え替えたの」

「なんで、あなたが?」

「だって、素敵だから! 手伝いたいと思って!」

「それは素敵な理由だ」


 優水の隣にいた男子生徒が言います。


「そう言ってくれると嬉しい! ありがとう! っで、あなた誰??」

「黒原正義(くろばらまさよし)、生徒会長をやってるよ」


 男子生徒はそう爽やかに名乗りました。



******************



「生徒会長さんなんだ! 凄い!!」

「いや、それほどでもないよ。話を聞く限り、君は園芸部じゃないんだよね?」

「うん、まだ転校してきたばかりで部活は決めてないの」

「それなのに、手伝ってあげた。その方がよっぽど凄いことだよ」

「そ、そうかな?」


 愛花は照れます。


「それにしても、愛花さん。随分汚れたわね」

「え、そうかな? これぐらい大した事ないけど」

「そう、だったらいいけど」

「ホース持ってきたよ!」


 花凛が蛇口につないだホースを持ってきます。


「よーし、それじゃ水をやろうやろう!」


 花凛からホースを受け取って、愛花は張り切ります。


「ほうしゃ!」


 愛花は元気よく言います。

 ですが、ホースから水が出ませんでした。


「あ、あれ?」

「うん、おかしいな……」


 花凛は蛇口をもっと回してみます。


バシャアアアアアアン!!


 ホースから盛大に水が放射されました。


「ミミ!?」

「きゃあ!?」


 愛花に水がすごくかかりました。それと水の妖精ミミが出て来て愛花の服につきます。


「び、びしょびしょね……」


 優水は呆気に取られて言いました。


「ご、ごめん!」

「あははは、気にしなくていいよ」

「愛花さん、そんなに濡れちゃったら着替えないと風邪ひくわよ」

「うん……でも、着替えが無くて」

「体操着は?」

「今日、体育無かったから持ってきてないの」

「ああ、そうだったわね。だったら、私のを貸してあげるわ」

「ありがとう!」

「教室に行きましょう。黒原君、」

「うん、わかった。備品室には俺一人で行くよ」

「ごめんなさい」

「気にしなくていいよ」


 正義は笑ってそう言いました。


「それにしてもミミって……?」


 一瞬、妖精のようなものを正義の目に入ったみたいですが、一瞬のことだったので気のせいだと思ったんでしょう。



******************



 愛花と優水は教室に戻りました。

 そこで愛花は優水から体操着を受け取って、着替えます。


「大丈夫? 小さくない?」

「うん、大丈夫! ピッタリだよ!」


 愛花は体操着に着替え終わります。


「ありがとう! 優水はいい人だね!」

「え、そ、そう……?」

「友達になれてよかったよ!」

「ともだち……?」


 優水はその言葉に違和感を覚えました。


「あの……愛花さん?」

「何?」

「私達、友達なの?」

「うん! そうだよ!」


 愛花は迷いなく答えました。


「私達、まだ会って三日しか経ってないのよ。それなのに友達っていっていいのかしら?」

「友達になるのに、時間なんて関係ないよ。この人と友達になりたいって思ったその時から友達なんだよ」

「……愛花さんは、私と友達になりたいの?」


 優水は問いかけます。


「うん!」


 愛花はやっぱり迷いなく答えました。


「………………」


 優水は静かにその返答をゆっくりと受け止めます。


「ミミ!」

「リリ!」


 そこから妖精達の声がします。


「……え?」


 優水はビックリします。


「リリに会えたリリ!」


 花の妖精リリは水たまの形をした妖精と手を取り合っています。それは水の妖精ミミです。

 どうやらホースの水と一緒に飛び出して、愛花の服についちゃったみたいですね。


「ミミの他にもう一人妖精がいたんだね」

「愛花さん、あれ知ってるの?」


 優水は愛花へ訊きます。

 それを見て、二匹の妖精は優水の方をビックリして見ます。


「ミミが見える人間が二人もミミ!?」

「一人は愛花で、リリが見つけたフェアリーガールリリ!」

「リリはもうフェアリーガールを見つけたミミ!? すごいミミ!?」


 ミミはビックリします。


「あの、愛花さん、これってどういうことなの?」


 優水は困惑しつつも事情を知っていそうな愛花に訊きます。


「私もよくわかってないんだけど……」


 愛花はそう前置きしてミミとのこと、フェアリーガールのことを説明します。



******************



「やあ、黒原君」


 正義のもとに近くの高校の制服を着込んだ少年がやってきます。

 高校生なのでいうまでもなく年上ですね


「村崎さん、もう来たんですか?」


 正義は意外そうな顔をします。


「善は急げといいますからね。迷惑でしたか」

「いえ……決してそのようなことは……」


 正義は遠慮気味に答えます。

 迷惑といかないまでもちょっと困った感じですね。


「それではさっそく調査してみましょう」

「いくデデ!」

「いくってどうするんですか?」

「こうするんですよ、デビルマジック!」


 村崎は黒い光を発して、変身します。


「紫の悪魔・スピネルデビル!」


 フォーマルスーツに身を包んだ紳士が現れます。


「あのガが適当ですね」


 そう言ってスピネルは紫の光をガに浴びせます。

 すると、ガは見る見る大きくなって男子達と同じくらいの大きさになります。


「ガの悪魔デビモース、デデ!」


 デクは高らかに命名します。


「さあ、いきなさいデビモース! フェアリーガールを見つけなさい!」


 デビモースは飛び上がります。


「果たして、フェアリーガールは姿を現わしますかね」


 正義は疑問を口にします。


「さあ、どうでしょうね……」



******************



「悪魔が現れたリリ!!」


 あらかた事情を説明した後、リリが飛び跳ねます。


「悪魔!?」

「悪魔って今話していた!?」


 今話を聞いたばかりの優水は信じられない想いでした。


「そうミミ! 妖精と悪魔は敵対しているミミ! きっとミミ達を探してるミミ!!」

「愛花、行くリリ!」

「ええ!」


 愛花は教室を出て行きます。


「愛花さん! 行っちゃった……」

「ミミ……ミミはどうしたらいいミミ?」

「悪魔って言われても、私にはどうしたら……」


 優水とミミは顔を合わせる。


「どうかしたいミミ?」

「……え?」




 愛花が校舎の外に出ると、ブォンと大きな羽音が空から聞こえる。


「おおきいが!?」

「悪魔のがリリ!!」


 悪魔のが、デビモースは飛び回って、鱗粉を撒き散らします。


パァン! パァン!


 鱗粉から火花が散ります。


「花火みたい……あつ!?」


 愛花は火花に触れて火傷します。


「愛花、フェアリーガールに変身するリリ!」


「そ、そうだね! これは退治しないと危ないわ!」


 愛花は胸のブローチに触れて、唱えます。


「フェアリーマジック!!」


 ブローチは光り輝きます。

 花びらが舞い散り、愛花を包み込みます。

 桃宮愛花は花の妖精に生まれ変わります。


「花の妖精フェアリーフラワー!!」


 フラワーは愛花から変わった姿を確認します。


「また、変身できた!」

「そのブローチにはフェアリークイーン様の力が宿っているリリ。だから魔法が使えなくても変身はできるリリ!」

「このブローチって凄いんだね!」


パァン! パァン! パァン!!


 そんなやり取りをしているうちにデビモースが鱗粉をふりまいて、火花を散らしていきます。


「あつ! あついよ!!」


 フラワーは飛び回って鱗粉をかわそうとしますが、デビモースはしつこく追いかけてきます。

 空を飛んでいるからとても速いです。

 すぐフラワーは追いつかれます。


「フラワーソード!」


 フラワーがそう唱えると、花びらが剣に変わります。


「で、できた!?」

「フェアリーフラワーに変身すれば、フェアリークイーン様が力を貸してくれるから魔法が使えるリリ!」

「なるほど、そういうことなんだね! よおし!!」


 仕組みがわかったところで、フラワーはデビモースに斬りかかります。


「フラワリング・スラッシュ!!」


ブウウウン!!


 ですが、フラワーソードによる必殺の一撃はかわされてしまいます。

 デビモースは危険を察知して飛び上がったからです。


「あ、あれれ!?」


 呆気に取られているフラワーに鱗粉がふりかかります。


パァァァァァン!!


 火花が燃え上がってフラワーを襲います。


「キャァ、アヅイ!?」


 フラワーは大やけどします。

 これはピンチですね。


「あれが悪魔なのね!」


 校舎から出てきた優水とミミはデビモースを見上げて驚きます。


「そうミミ! ミミ達妖精の国と敵対している悪魔の国の手先ミミ!」

「悪魔が暴れたら、学校が滅茶苦茶になってしまうのね」

「ミミ、だからこのブローチをつけてフェアリーガールになってほしいミミ!」


 ミミは優水の胸につけたブローチを指します。


「愛花さんも戦ってくれてる! だったら、私も戦うわ!」


 優水は凛々しく返事をします。


「それで、どうすればいいの?」

「あらら??」


 ミミはすっころびます。


「ブローチに念じてフェアリーマジックと唱えればいいミミ」

「そ、それだけでいいの??」

「難しく考えなくていいミミ!」

「え、ええ……ふぁあり、まじっく……?」

「声が小さいミミ!」

「は、はい!」


 そう言われて優水は背筋がピンと立ちます。


「フェアリーマジック!!」


 優水は今度こそ大きな声で魔法の言葉を唱えます。

 すると、水玉が現れて優水を包み込みます。

 水玉の中で優水の身体は洗われていき、水の妖精へと生まれ変わります。


「水の妖精フェアリーアクア!」


 フェアリーアクアは高らかに名乗りを上げます。


「優水ちゃんがフェアリーアクア!? ど、どういうことなの!?」


 フラワーは戸惑います。


「詳しいことは私もまだわかってないけど、ひとまずあの悪魔を倒してからにしましょう」

「ええ、わかったわ!」


 ひとまず、二人で戦うことになったみたいです。一人より二人の方が心強いモノですからね。

 ですが、デビモースはある方向に向かって飛び上がります。


「あれは花壇!?」


 愛花と花凛が植え替えた花壇に向かっていきます。


「鱗粉で花壇が滅茶苦茶になっちゃう!? そんなことさせない!!」


 フラワーは懸命に追いかけます。

 ですが、デビモースはやっぱり羽があって飛べるので速いです。


「あれじゃ、間に合わないわ!」

 アクアはどうしたらいいか考えます。

 フラワーソードでは飛んでいるデビモースに届きません。


「だったら、これで!!」


 アクアが手をかざすと、その手に鉄砲が出現しました。


「ウォーターブラスト!」


 水玉の弾丸が発射されました。


バシャァァァァァァァ!!


 お見事です。

 デビモースの羽に命中しました。


「今よ、フラワー!」


 デビモースの羽が撃たれたことで自由に飛べなくなって落ちていきます。


「フラワリングスラッシュ!!」


ザスン!!


 フラワーソードの一撃で、落ちてきたデビモースは一刀両断されます。

 これで悪魔の魔法が解けて、デビモースはただの蛾に戻っていきます。


「やったわね、フラワー」

「うん、ありがとうアクア!!」


 フラワーとアクアはハイタッチします。


「ミミー! これでミミもフェアリーガールを見つけることができたミミ!」

「よかったリリ! でも、フェアリープリンセスになるのはフラワーだリリ!」

「いやいや、アクアミミ!」


 リリとミミが明るく言い合っている。


「ところで、フェアリープリンセスって何?」


 アクアは二匹の妖精に訊きます。



******************



「あれがフェアリーフラワーですか」


 校舎の屋上からスピネルはフェアリーガールの戦いを見下ろして言います。


「俺が前にみたときは一人だったんですが」


 オニキスは忌々しそうに、フラワーとアクアを見つめます。


「もう一人いたということですね。厄介です」

「と、言いますと?」

「フェアリーガールが二人……これは妖精の国にも時期がやってきたということですね」

「時期? まさか、妖精の国にも俺達デビルプリンスみたいに人間の中から選ぶのですか?」


 オニキスはびっくりします。

 どうやら彼も知らないことのようです。


「そうです」


 スピネルは答えます。


「そうです。悪魔の国が人間から選んだ私達デビルボーイの中から悪魔の王子デビルプリンスが選ばれるように、妖精の国も人間から選ばれたフェアリーガールから妖精の王女フェアリープリンセスに選ばれるんですよ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る