第93話 ぱいんあっぷる
「パインにパイナポーとはね…」
酢豚のパインには肯定的だ。
パイナップルは好きだ、しかし…酢豚にパインが入っているのに、デザートがパイナップルとは如何なることか?
「パイン尽くしで歓喜するほどパイン派じゃないからね‼ なんなら缶詰の輪切りパインより、パインが浸った砂糖水の方がメインだから俺‼」
病室の夕食に文句を付ける面倒くさい入院患者、田中さん。
「そもそもアレだからね、パインの正式名称なんて誰も解らないからね‼」
そうパインアップル? パインナップル?
「皆、解らないからパインって略してんだからね‼」
そんな呼称がハッキリしない果物界のUMAみたいなもんが、カブるとか?
「アレか? パインの缶詰を間違って仕入れたのか? 一桁間違えましたか? ネットで、たまに見る間違えて発注しちゃいました助けてください、みたいな感じ?」
ゴンッ‼
あまり騒ぐからナースゾンビに正〇丸の瓶を投げつけられた田中さん。
「………」
瓶の蓋をしっかり閉めてないから、蓋が空いて酢豚に正露〇が塗される。
「オマッ…ちょっ、コレ‼ 酢豚の全てを〇露丸に汚染されたじゃねぇか‼」
瞬殺である。
「正〇丸でメシが食えるか‼ 作り直しを要求する‼」
完璧に無視しているゾンビ達。
隣をチラッと見ると患者ゾンビが酢豚を食べようとしている。
サッ…
自分の酢豚の正〇丸和えとすり替える田中さん。
「今日のところは、コレで我慢するとしよう」
食べる前に、トイレに行くことにした田中さん。
未だ身体を動かすのに苦労している田中さん、昨日まで隣にいた夏男は早々に退院したというのに…というか自分が入院中に2度退院している夏男、思い返せば、あの回復力は人間離れしている。
「末恐ろしいヤツだ…」
トイレから戻ってチラッと見ると、隣のゾンビ、酢豚を完食していた。
(よしよし、脳みそも、目玉も腐れてんだから、何喰っても一緒だろ…)
窓から夜空を外を眺める、窓を開けると肌寒い風が病室に吹き込んでくる。
冷めた酢豚を口に運ぶと…
「臭っせー‼」
お口に広がる正露〇の風味。
「な…なにゆえ?」
隣の患者ゾンビはシレーッと輪切りのパインを喰っている。
「貴様…目もねぇくせに‼」
隣のゾンビは田中さんがトイレに行っている間に酢豚を元に戻したのである。
フルフルと拳が震える。
いや、悪いのは自分である…解っているのだ。
だが込み上げる怒りは何処に向かえばいいのか?
行き場を失った怒りの鉄拳は…田中の中のナニカを呼び起こした。
「穏やかな心を持ちながら…激しい怒りで目覚めた戦士…スーパー…」
プスッ…
バタッ…
あまりに騒がしいので婦長ゾンビが田中の後頭部に鎮痛剤的なナニカを注射した。
ソレがなんなのか?
後頭部に刺していいのか?
良く解らないが、田中は大人しく眠りについた。
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