第92話 いんな~うぇあ

 結局、河童はいなかった…。

 いたのは無数のヒルとザリガニ、タニシ…。

「アレは主よ、間違いないわ」

 立花先生は巨大なヒルを主と呼んだ。

「その主をボウガンで撃ち抜いちゃいましたね」

「バチが当たるです」

「ハハハ、撃ち抜いたのはキミだよ冬華くん」

「そうですわ、私には関係ありませんわ」

「……アレは夏男です」

「ん? そうすると夏男は、あの沼の主だったのか?」

「かもしれませんわ…だって住んでいそうですもの」

「河童がですか?」

「ん? そうすると夏男は河童なのか?」

「可能性は捨てきれませんわ」

「アレが河童なら…冬華、河童は欲しくないです」

「夏男、水泳得意だったかな?」

「さぁ?」

「興味もありませんわ」

 ガラッ…

 生徒会室のドアが開く

「俺が居ても居なくても、俺の話題…貴様ら、さては俺のファンだな?」

「それだけ嫌われているということですよ」

「アンチですわ」

「退院おめでとう夏男、今日もオマエの悪口で盛り上がっていたところだ」

「冬華…こんなカッパ嫌です」

「うん俺、なんか慣れてきた、さすがにね、だからもう傷つかないんだ、何も足さない、何も引かない、ありのままの姿見せるのよ」

「ピュアモルトみたいな男だな」

「ありのままの姿って?」

「ありのままの姿…俺、今ブラジャー着けているからね」

「佐藤君、先生、色々受け入れる方だけど、そういう方面には抵抗あるわよ」

「なんかね、安心する、ブラ付けてると俺、安心する、守られている感じ」

「何に攻撃を受けているんですか?」

「お前たちでしょうが‼ 俺のピュアモルトを濁すでしょうが‼」

「それがなんでブラジャーで保護されるんです?」

「それがね、解らないんだ…ただ、どんな感じなんだろうって思って付けてみた…そしたらなんかホッとして涙が出てきた…もうブラなしに戻れない」

(もうダメかもしれない…)

「フロントホックなんだ今日は」

「冬華、ボウガン持ってくるです」

(殺る気?)

「もう同じ空気を吸うことすら我慢でそうにありませんわ」

「ハハハ、夏男よ、私の宇宙船地球号から出て行ってはくれまいか?」

「何を言われても平気、ブラさえあれば強くなれるから」


『外伝 今日の田中さん』

「違うの、コレ、スースーするだけなの‼ 軟膏じゃないの‼ なんなら少し染みるから‼」

「あぅあ…うぁ?」

 火傷に唯一効果がありそうなオロナ〇ンと間違えてヴェ〇ラップを持ってきたナースゾンビの間違いを指摘するも伝わらない田中さん。

 退院の日は遠いようだ。

 頑張れ田中さん、今日の晩御飯は酢豚だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る