第91話 ほすぴたりぜ~しょん

「不思議と喉が渇くんだが…」

 再び入院することになった夏男。

 血を吸われ過ぎたせいか、記憶が曖昧になっているようだ。

「水を飲んでも飲んでも乾くんだよな~」

 運ばれた時は干物のようにカラカラの身体だったが、点滴と輸血で、しっかりと回復はしていた。

「ほとほと丈夫にできてるな…キミは」

 隣で寝ている田中さん。

 いい加減ミイラ男のままである。

 2日で干物から回復した夏男を呆れたように見ている。

「そう、俺、風邪とかひいたことないから、フハハハハ」

(バカはそうなんだよな~、風邪をひいても気づかないんだよな~)

 病院をホテル代わりに利用している夏男、そんな彼に付けるクスリがあれば…残念ながら、この病院には置いていないようだ。

 ナースゾンビが放り投げてくる、オロナ〇ンあるいは時々、間違えて置いていくヴィッ〇ス・ヴェ〇ラップくらいしか置いてないのかもしれない。

「結局、万能薬『正〇丸』さえ飲めば、大概は問題ナッシング」

 サムズアップする夏男。

(元レッドショルダーの異能生存体並みに死なないな…コイツ)

 産まれながらに生存を約束された男、遺伝確率250億分の1…神の後継者…それが二階堂 夏男…だとしたら銀河系最大の不幸である。


 聞けば、この男、巨大なヒルに血を吸われたというではないか。

 瀕死というか干物のようになって運ばれてきて、輸血して元に戻って、今は点滴だけで元気になっている。

「二階堂君、キミに合う血液があってよかったな」

「輸血されたんだってね俺、覚えてないけど」

(明るいな~)

「キミ、何型?」

「血液型? いや知らない、聞いたことない…考えたことない」

「……ホントに良かったなキミ」

 確率は1/4…適当に補充した血液型が一致したのだ。


(この男…本当に選ばれし者なのかもしれない…)

 隣でヘラヘラ笑う男に背筋が寒くなる田中さんであった。


『外伝2 爺やと婆や』

「婆や、ソコ違う‼ コッチ」

「あぅあ」

 どうにも魚を見ると捌いて干物にしたがる婆や、池の鯉を獲ろうと池の中に入っている。

 干物職人の家系なのかもしれない。

 ゾンビになってもDNAには逆らえない的な本能を超えた執着。

 爺やが、気の強い婆やの世話を焼いて、もう数十年になる。

「文字通りの腐れ縁じゃ…」

 婆やの手を引いて屋敷に戻る2人

「ゾンビになんてなっちまいやがって…死んでも迷惑をかけやがる」

 口ではブツブツと文句を言うものの、その顔は笑っているのだ。

 そんな後ろ姿を見て、春奈は思う。

「まぁ今日も、爺やと婆やは仲良しですわ」


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