第86話 めいくあっぷ

「で…アレは、どういうことなんでしょう?」

 生徒会室で花瓶に花を生けている夏男。

「気味が悪いを超えて気色悪いですわ」

「うむ、気分が悪いな…あんな夏男は」

「おはよう、友よ」

 振り返った夏男、濃い目のメイクを施している。

「ゾンビ越えの不快感」

 秋季が扇子で顔を覆う。

 白塗りに青いシャドウに赤い口紅

「昔、観たことがありますわ…動画サイトで、いきなり画面が変わって、あぁいうのが、どアップになりますの、心臓に悪いと思いましたけど、リアルに目の前にいると、驚き寄り怒りが沸き上がるものですのね、私、今なら殺人をサラッとクリアできそうですの」

「おはよう、スチューデン…ツ…んぎゃぁぁぁ」

 立花先生の悲鳴でゾンビが怯えだす。

「空腹の…ゾンビも避ける…夏男かな…」

 秋季が一句読んだ。

「えっ? あの化け物、二階堂君なの? イカレタピエロゾンビかと思ったわ」

「えっ?イカしたヒエログリフ?」

「まぁ、頭が腐れて、耳まで…もうゾンビ化まっしぐらですわ」

「イカしたヒエログリフって、どんなんでしょうね?」

「きっと、素敵な絵柄なんですわ」

「えっ? 素敵な家柄?」

(ポンコツに磨きがかかっている。いよいよか…今までのダメージの蓄積なのか?)


 遡ること1日前…

 夏男は美容整形を試みた。

 ところがだ…手術室で寝て待つもゾンビドクターはウロウロするばかり…

 そこに落ちていたメイクの本と散らばったメイク道具…

 汚れた鏡に映る自分、夏男は口紅をひいてみたというではないか。


(I'm starting with the man in the mirror)

「俺は、鏡の中の男と一緒に歩き出したのさ…」

「あぁ…鏡の中の化け物と何処へ向かうつもりなんですか?」

「昨日と違う世界」

「驚くべき馬鹿ですわ」


「おはようです……カッパ釣れたですか?」

「四宝堂、アレはカッパじゃないよ」

「アヒルですか?」

「可愛いコックさんにはなれなそうだがな」

「先生、二階堂君には、4年経っても慣れないわ」

「私は初見から、慣れようという気が起きませんわ」


 冬華がジトーッと夏男を見ている。

 冷蔵庫からキュウリを出して

「チッチッチッ…」

(カッパってそういう感じなんだ、犬か?)

「るーるるるるるるー」

(ソレ…狐…)


「時間だな、さぁ祈るかな」

(ソッチ方面にもカブれてるのか)

「バチカンってどっち?」

「知りませんよ」


 バチカンのエクソシストに真っ先に祓われそうな白塗りの化け物が膝をついて全身で祈りを捧げている。


(どうしたら戻るだろう…)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る