第83話 ないとえくすぷろ~じょん
『腐れた世に~腐った人波、ゾンビ~ズ、腐っていく僕らの心~』
「なんか歌ってますね」
「ジャンルが特定しにくいですわ」
「ジャンルの向こう側でエレキギターが不快だわ」
「不愉快という名のジャンルだな」
「この音でカッパが逃げるです~」
(この娘の中でカッパという未確認生物が固まっているんだな…カッパはエレキギターが嫌いか)
気持ちよく歌っている夏男と田中さん
「見てみろ‼ アイツら俺達の曲にくぎ付けだぜ‼ サマー」
「あぁ、セカンドのギターに俺のボイス、それ以外のサウンドはいらない‼」
夏男をサマーと呼ぶセカンドこと田中 次郎、2人は解り合ったのだ。
「青臭い世直しなどいらない…ゾンビにも人にも届くメッセージを生み出そうぜ」
夏男は田中さんが差し出した右手を力強く握り返した。
「んぎゃぁぁー」
田中さんの火傷は完治していなかった…。
『ハートフルマインド‼ バチカン万歳‼ バチカン万歳‼』
「まぁ、黙って聞いてりゃサビにはいりましてよ あつかましい」
「ハハハ、とりあえず、手あたり次第に何かを投げつけようと思うぞ」
「賛成よ」
立花先生は、すでに冷蔵庫にあるキュウリを投げつけている。
(アレだ…思ったら実行しているっていうギャングの兄貴理論だ…ぶっ殺したなら使っていいんだっけ)
ボクッ…
「アンギャー‼」
キュウリが数本、田中さんに命中した。
火傷は完治していないのだ、痛覚が剥き出しになっている火傷を軟膏で覆い、包帯で保護しているわけだ、触れただけで痛いのだ。
「大丈夫かセカンド‼」
「オーライ‼」
包帯から覗く目が涙で濡れている。
(気づいているさ…オマエってヤツは、それでもギターを弾き続けるんだな、アイツらのハートに刺さるまで…俺は歌うぜ‼)
『ハートフルマインド‼ バチカン万歳‼ バチカン万歳‼』
「おのれ…奴ら、ボリュームを上げてきたな」
「あの撃たれ強さ…夏男さんですわ…」
「そうなると、隣のミイラは誰なんでしょうね?」
「誰でもいいわ、とりあえず不愉快だわ」
キュウリでへこたれないミイラ男に苛立ち、キュウリ以上に硬く投げやすそうな物を冷蔵庫から探している。
「ん? アレは?」
小太郎がコソコソと校庭でウロチョロしている小さな影を見つけた。
(まさかカッパ?)
いいえ…忍者のコスプレをした冬華です。
(何をしてるんだ…)
しばらくして冬華が戻ってきた。
「ミッションコンプリートです」
(英語で任務完了を報告する忍者って…)
ボムッ‼
「ガスガス…大爆発…です」
ボンベを数本、焚火の周辺に設置してきたのだ。
(2日連続でガス爆発…)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます